「岡南飛行場祭り2013」開催


エプロンに並んだ消防防災ヘリコプターと警察ヘリコプター



 2013年年9月8日(日)、岡山県岡南飛行場に於いて「岡南飛行場祭り2013」が行われた。

この催しは2011年9月に東日本大震災復興支援事業として航空フェアと銘打ち第1回目が企画され大成功を収め、2012年11月には第2回目が開催された。前回同様ヘリコプター、ビジネスジェットなど多様な機種が豪快なデモフライトを繰り広げる催しは注目されたがあいにく雨の中の開催となり人出は今ひとつ。そのため今年第3回目に期待が集まっていたが、今年は規模を縮小、航空フェアではなく、空の日のイベントの一環として地元の方々を対象とした「飛行場祭り」として開催された。

 全国的な異常気象、前線の停滞等で中国地方は天候がすぐれず、当日も雨の予報で開催が危ぶまれたが、当日は曇天(午後より小雨)ながら無事開催、大勢の観客が飛行場に詰め掛けた。

 飛行場祭りは模擬店などが並ぶ一方、エプロンも一部開放。岡山県消防防災航空隊のベル412EP「きび」、岡山県警察航空隊のアグスタA109E「わしゅう」等、この飛行場の常駐機が展示された。またこの2機は午前と午後に計2回のデモフライトを実施、午後は小雨の降る中、迫力のフライトを披露した。


飛行場祭り会場



JA110W アグスタA109E わしゅう 岡山県警察航空隊

 「わしゅう」は岡山県警察航空隊の双発軽ヘリコプター、
初代は1987年〜2009年に活躍したベル206L-3、本機は2008年から導入されたその2代目である。
登録記号の110Wは110は警察を、Wは初代から踏襲した名前の「わしゅう」を意味する。「わしゅう」とは瀬戸内海国立公園の名勝「鷲羽山」にちなんだもの。山の形が鷲が羽を広げた格好に似ていることから名づけられた名前だが、本機の精悍なフロントマスクは正に鷲を思わせる。
第2回のフェアではちょうど定期点検中で参加できず、今回1年ぶりのお目見えとなったが、今回はデモフライトを実施するため機体を軽くする必要があり、サーチライトからホイストに至るまで殆どの装備が外されている。警察のヘリコプターがこうした「素(す)」の状態で展示されることも、ある意味珍しい。

 展示の最中、パイロットとメカニックの方にお話を伺うことが出来た。
高高度仕様やワイヤーカッターなどについて興味深いお話を聞くことが出来たが、アルプスなどに比べそれほど高い山を有しない岡山県に於いて、高高度性能に秀でた機体の適性について聞いてみたところ、双発N類(最大離陸重量3,175kg以下の回転翼航空機)であるこの機体は、ベル412等と比べて機体が小さい、警察装備は重いので普通ならパワー不足というところだが、この109Eは強力なエンジンにより余力があるため初代「わしゅう」に比べ格段に使い勝手が良い、とのこと。高高度での活動というよりは余力あるパワーを活用して活動出来る点に定評があるようだ。また高速性能に関しては「高速になるほど機体が安定し振動がなくなり滑るように飛ぶ、など正に名車フェラーリを生んだスポーツカー王国「イタリア」を思わせるつくりを感じる」との事だった。



JA119H ベル412EP きび 岡山県消防防災航空隊

 岡山県消防防災航空隊は2009年(平成21年)4月に発足、この「きび」」は全国の消防防災航空隊で使用されているベル412の中で現在最も新しい機体と言える。

愛称の「きび」は岡山県の古称である「吉備(の国)」からとっているが、その他きびきびと機敏に活動するという意味もある。機体デザインは赤色を基本とし、岡山の晴れ渡った空と瀬戸内海及び山を表す三つの青色の円が描かれている。
登録記号の119Hは119は消防を、Hは晴れ(Hare)の国岡山を表す。



 エプロンには岡南飛行場に常駐する小型固定翼機が並べられた。
午後にはこれにセスナ560(サイテーション・ウルトラ)も加わり、豪華な顔ぶれとなった。また展示機ではないが、ビジネスジェット機のセスナ525Aがトーイングされるシーンなども見られ、飛行機ファンを喜ばせた。


エプロンに並べられた小型固定翼機


JA001A セスナ560(サイテーション・ウルトラ)
(元は朝日新聞社機として活躍していたことも・・)




イベントは機体展示だけでなく迫力あるデモフライトも披露された。

 1番手は岡山県消防防災航空隊の「きび」

離陸し場周飛行を行った後、会場中央に進入、隊員の降下準備に入る。隊員が降下し、要救助者を吊り上げる。その後 重低音のローター音を響かせ、急上昇、ダイナミックなフライトデモンストレーションに 移行、深いバンクをとりながら会場を低空で駆け抜ける姿に観客から歓声が上がった。


離陸後、観客の前を高速でパス


微速前進しながら隊員が降下準備に入る


隊員が降下


要救助者を吊り上げる


豪快に旋回しフライトデモを行う


深いバンクをとり急旋回





 2番手は岡山県警察航空隊のアグスタA109E「わしゅう」

軽やかに離陸すると、ギアアップし上空をパス 、その後も高速進入、上昇反転などを繰り返したのち高速でR/Wへアプローチ、滑走着陸を見せる。ギア式降着装置を持つ機体ならではの演目で観客を魅了する。その後360度旋転しながら会場中央を横進、また急上昇し、華麗なフライトを披露。観客から「凄い!」「速い!」「カッコイイ!」等の歓声が上がる。そんな声援に応え、着陸後はタキシングしながらコパイが手を振る光景も見られた。

 わしゅうは第2回のフェアではちょうど定期点検中で参加できず、本日のフライトを心待ちにしていたファンも居た。ギアアップし目の前を高速で駆け抜ける姿に大勢の航空ファンのカメラからシャッター音が途切れることなく聞こえていた。


離陸 前傾姿勢で機速を上げる


ギアアップし、サイレンを鳴らしながら観客の目の前を高速パス


急上昇に移る


背中をみせて旋回


流麗な姿を見せ、高速でローパス


360度旋転しながら会場中央を横進


タキシング中、手を振って観客の声援に応える




3番手は岡山グライダークラブのシャイベSF25C、華麗なフライトを披露。
ちょうど飛行機をテーマにした宮崎駿監督作品「風立ちぬ」が公開されており、音もなく静かに舞う演技は観客を魅了した。


JA2330 シャイベSF25C




 今回、残念だったのは岡山市消防航空隊の川崎BK117C-1「ももたろう」が見られなかったこと。
定期点検と重なり残念ながら不参加となった。このももたろう、今年(2013年)11月4日に岡山県笠岡市で開催される「笠岡飛行場まつり」に参加する予定という、是非その迫力あるレスキューデモを見てみたいものだ。

最後に

 岡南飛行場は岡山県岡山市南区にある旧岡山空港である。
昭和30年に開港、第一線の空港として利用されてきたが、ジェット化の波により見直され、地理的条件から滑走路の延長が出来ないため新空港の建設が決まった。昭和63年に新空港が北区に新設されたが、その後も防災拠点として重要な役割を担っている。岡山県は特に年間降雨量が少なく、「晴れの国」と呼ばれ、台風も通過せず災害が少ない事で知られる。しかしながら近年、日本周辺の海水温度の上昇により台風が発生しやすくなり、昨年(2012年)あたりから台風が通過するようになり、今年(2013年)9月の台風の際には豪雨で土砂崩れが起き、一部の地域に避難勧告が発令されるなど状況は一変している。その中でこの1,200mの立派な滑走路を持つ岡南飛行場が防災拠点として存在することは大きな価値がある。是非そんなアピールも含め、次回は規模を拡大し「第3回航空フェア」として開催されることを切に願う次第である。

2013/09/23 加筆
2013/09/15 加筆
2013/09/08 初稿


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