事例研究(7):YAMAHA AW16G

YAMAHA AW16G

長年使ったDATが壊れて後継機をさがしていた。ちょうどそんなとき
貸しスタでレンタルして気に入り、YAMAHA AW16Gを入手した。

8TR同時録音、EQ・ダイナミクス等エフェクト付き、編集して、さらに
マスタリングエフェクトをかけてステレオトラックにミックスダウン。
オプションのCD-RWを使ってCD書き込み、WAVEファイルエキスポート
ならびにインポートが可能。
「録音からCD制作まで全てのプロセスが1台で完結」のワークステーション!

ポータブルなAW

AW16Gにふれて驚いたのは思ったより小型で軽いことだった。
上位機種と寸法・重量を比べてみよう。

AW4416  558 (W)×460 (D)×148 (H)mm・11.8kg(オプション含まず)
AW2816  480 (W)×429 (D)×141 (H)mm・9.5kg(オプション含まず)
AW16G   425 (W) ×321.5 (D) × 98.8 (H)mm・4.4kg (オプション含まず)

重量4.4kgは上位機種AW2816(9.5kg)のなんと半分以下だ。
そのかわり、フェーダーオートメーションがない、拡張性がない、フォーマットが
16bit/44.1kHzのみ、全chのパンを1本のつまみで操作する、ダイレクトロケート
ができない、などの機能限定がある。デジタル入出力端子はオプティカル。


A3サイズ4.4kg。ちょうど『サンレコ』見開き位の大きさ。

専用ソフトケース(オプション)

一回り大きなPCバッグ風の肩掛け専用ソフトケースに入れて電車に乗れるのが○。
ケースは3WAYで、手提げ、肩掛け、さらにリュックにもなる本気モバイル仕様。
「持ち運べるAW」として設計されていることがわかる。

バス停のベンチにて。ベルトを出してリュックに。

8プリ付き

1-2chはファンタム付きXLR、3-8chはTRSフォン入力端子で8プリ。

比較のため、
(a)1-2chXLRに直接
(b)3-4chにM-audio DUO(スタンドアロンモードからライン、AW16Gプリのゲインは11時位)
を聴き比べた。マイクはAKG C451B。

(a) AW16Gのマイクプリは高域がやや細身ながら繊細で帯域バランスもよくSNも悪くない。
ヤマハらしい冷たく上品な透明感。
オーケストラ録音ではヴァイオリンがやや硬質に感じられることもあるが解像度はある。
ゲインが3時の位置を過ぎたあたりで急速にノイズが気になるポイントがあるので注意。
(マイクプリではよくあること。DUOも3時あたりから爆発的にゲインが高まり、ノイズも出る。
ただしゲインが上がると雑音と同時に信号レベルも上がるのでS/N比は変わらないそうだ。)
また、AW16のプリはゲインが小さめで、ダイナミックマイク使用時には不自由するかもしれない。

(b) M-audio DUOは中低域がしっかりした太い音。高域も出ているがVnの高次倍音は相対的に弱く、
よく聴くとなめしたような音になる。それが独特の艶っぽさになって良い、という見方もあるかも。
この比較テストではいったんDUOのAD/DAを通っているので、DUOにはやや不利な状況。
しかしUSBで直接PCに入れてもサウンド傾向はほぼ同じ。

AW16Gのプリはソツなくバランスよく、この価格で8プリなら順当だろう。
クラシック録音にもじゅうぶん使える音質と思う。


オーケストラ録音テスト。(モーツァルトのミサ曲なのでビオラが空席)
客席に立てたハイスタンドでAKG C451Bを指揮者後方1m、ステージから約2m高に。

慣れるまでが難しい...

一通り慣れるまで操作の難しいこと!操作ボタンと画面メニューが多くて複雑。
MTR(Multi Track Recorder)はミキサー+録音機+エフェクタ+CD-RWの複合機
なので、各セクション合計の操作が数倍煩雑。いちどアナログミキサーを使って
みると信号の流れが理解しやすい。AWの場合、マニュアルが項目別に分かれていて、
必ずしも実際の作業の流れに沿ってないのも難しさの一因。付録DVDデモはAWの
機能と作業の流れを過不足なく説明して分かり易い。

クラシック録音のためのTips

試行錯誤しながら見つけたAW16Gクラシック録音Tipsをいくつか。

・まず複数トラックに録音して、EQやダイナミクスエフェクタをかけながら2chに
 ミックスダウンするようになっている。2chステレオ生録音の場合、
 トラック録音をとばして直接、REC>MIXDOWN>ST TRACKに録音してもよい。
 (ミックスダウンしても劣化はほとんど気にならないが時間がムダ。)
 ファイルサイズも半分で済む。
・そのままではモノラルになるので、PAN(ノブを押す)>PAN画面でL,R
 チャンネルのパンを設定しておく。
・ただしフェードイン/フェードアウトはSTフェーダーで手動式になる。(笑)
 フェードイン/アウトだけのためにトラック録音>ミックスダウンの2重の
 手順を踏むことになるかも。。。さもなくば見切り発車でフェードインして
 おき後で無音部分をDELETE。(他にうまい手はありませんかね?)
・MIDIのMMCでPCのシーケンサーに連動させればオートメーション可能。
・尺の調整、不要部分削除、マーカー打ちはミックスダウンする前に行う。
 ステレオトラックができてから削除すると元のソングファイルとずれてしまう。
・編集範囲指定の際、まず波形表示でマーカーを打ってからEDIT画面に移ると便利。
・ミックスダウン時は使うトラックだけ結線して他は外すとSNを稼げる。
・エフェクタ、EQがデフォルトでONになるので、VIEW画面でトラックボタン
 を押し、エフェクタ、EQをOFFにする。この画面でPANも確認。
・CD焼きする前にソングを保存しなければならない。
・CD焼きのためには、ソングの長さが80分以下でなければSONG IS TOO LONG
 のエラーになる。ステレオトラックだけ削除してもダメ。最初から80分以下に
 録音しておく。(80分を越えるとCD書きできなくなる!!ソングを一部削除
 しないと書けないが、削除すると録音が失われる。コンサート収録注意!)
 そうなったらPCに取り込んで焼く。(または次項のやり方)
・長過ぎるソングを分割する法。ソングをCOPYして2つ作り、区別がつくよう
 ソングの名前を変えておく。それぞれ後半と前半をDELETEする。こうして
 ソングAは(ソングA前半)と(ソングA後半)の2つのソングに分けられた。
 CD-Rに焼くことができる。
・Undo,Redoを繰り返してソングのサイズが大きくなったらソングをオプティマイズ
 するとサイズを減らせる。SONG>LIST>OPTIMZ
 DELETEできない不要なSONG長もオプティマイズでカットできる。
 ただしUndo,Redo情報は消去されるので慎重に。
・時間やカウンタでダイレクトロケートできないので、マーカー打ちは重要。
・マーカーは再生中、録音中、停止中に打てる。
・マーカー位置変更・削除はSONG>POINT>MARKER画面で。
 DELETEなどソングの編集をするとマーカー位置の再調整が必要。
・擬似的にダイレクトロケートする方法。任意の場所にマーカーを打ち、MARKER
 画面でジョグダイアルで数値を変更し、MARK SEARCHキーで移動。
・マーカーはディスクアットワンスのCD焼きでトラック分けの点になる。
・ディスクアットワンスではマーカー間隔が4秒以上ないとエラー。
・DISC AT ONCE>MARKERボタンENTERから旗マークが表れるまで
 ワンクッションあるのでじっと待つ(笑)。
・液晶画面の角度が調節できないので、見づらい場合はスネアスタンドを使って
 立てる。またはオオハシのDAWスタンドを使う。(転倒注意)

他に便利なTipsがあれば教えて下さい。>all

参考サイト

SOUND ON SOUND>REVIEWS>RECORDING SYSTEMS>YAMAHA AW16G
http://www.soundonsound.com/sos/Oct02/articles/yamahaaw16g.asp

SOUND ON SOUND>REVIEWS>RECORDING SYSTEMS>YAMAHA AW2816
http://www.soundonsound.com/sos/jan02/articles/aw2816.asp
ヤマハ0シリーズミキサーおよびAWシリーズのマイクプリについて問題を指摘。

SOUND ON SOUND>REVIEWS>RECORDING SYSTEMS>KORG D1200
http://www.soundonsound.com/sos/Jan03/articles/korgd1200.asp
ライバル機コルグD1200とどちらを選ぶ?


今回の結論(^^)/

YAMAHA AW16Gは"持ち運びできるAW"である。
編集の自由度・容易さはPCに一歩譲るが、CD焼きまで1台で完結するのは便利。


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