ベトナム食べある記 〜第1回〜
by chinatsu

●2001/10/17 (水) 出ばなくじかれ…

一番安い航空券を買ったらハノイへ行くのにマレーシアのクアラルンプール経由だった。後で地図で見てみてずいぶん遠回りだったことに気が付く。
クアラルンプールには深夜1時すぎに着いた。トランジットラウンジというのが空港内にあって、18ドルでシャワーを浴びれたり仮眠がとれたりするんだけど、うっかりマレーシアに入国してしまったばっかりに、深夜だったので再チェックインができず、つまりそのトランジットラウンジが利用できなくなってしまった。空港近くのホテルを探すもみんなバカ高の値段で、結局空港のベンチで一夜明かすはめに。冷房が効いてて寒い。ありったけの洋服を身にまとってまるで乞食のような格好でベンチで横になる。でもこれが意外と眠れるんだな。あたしっていざとなったら乞食もできるかも…と変な自信をつけた。
ちなみに昨日の機内食はフィッシュフライ、ブロッコリー&ポテトぞえ、日本そば。はっきり言ってあまりウマくない。でもワインはおいしかった。ひさびさの一人旅の始まりに乾杯。
お昼過ぎのフライトに乗って3時頃いよいよハノイに到着!
空港からバスに乗って旧市街にあるYouth Hotelというゲストハウスにチェックイン。ユースホステルと名前は似てるけどまったく関係ない。ベトナム人はとにかくコピー好き。CDもコピーが当たり前。堂々と安い値段で売ってるし、例えば繁昌している店があればその向いにまったく同じ名前の店を平気でオープンしたりする。コピーされる店も別に訴えるでもなくこれまた平気で営業している。
荷物をおいてホアンキエム湖の周りをうろうろする。湖といってもそんなに大きくなくて、井の頭公園の池といった趣。それから、空港からのバスの中で知り合った日本人の男の子、寺沢クンとインドシナという観光客向けベトナム料理レストランで食事をした。生春巻き、グレープフルーツと海老のサラダ、ショウガで蒸した白身魚、野菜のチャーハン、そして333ビールを2缶づつあけて一人あたり約8ドル。安いしめちゃうまだったよ!それにしても333ビール。大好きなんだけどハノイではこの店でしか見かけなかった。どうやらサイゴンのビールらしい。

●2001/10/18 (木) ミイラはお休み

ホーチミン氏のミイラがあるというホーチミン廟に行ってみたけど、なぜか2週間お休みとのことで見れなかった。残念。
途中、おいしそうなおかずが店先に並ぶクアンコム(定食屋)で遅めの朝食。豚肉と大根の煮物や厚揚げの間に豚ひき肉を挟んでトマトと一緒に煮たもの、ミニハンバーグを香草で巻いて焼いたもの、青菜炒めとご飯、そしてスープは勝手に付いてきた。味はどれも日本のおふくろの味に近い。とてもウマイ!!これでたしか1万ドンもいかなかった(5〜60円といったところか)。
ハノイの街はとにかくさわがしくて渾沌としてる。砂埃、ひたすらクラクションを鳴らしまくって走るものすごい数のバイク、排気ガス。クルマはあまり走ってない。バイクがもし全部自転車だったらインドの町並みにちょっと似てるなと思う。この国の道路を横断するのにはちょっとしたコツがいる。信号はほとんどないのでバイクの途切れるのを待っていたら一生渡れない。けど勇気を出してバイクだらけの道路にゆっくりと踏み出して、そろそろと前に進み出るとあーら不思議バイクたちがどんどんよけてくれる。バイクを怖がって急ぎすぎないのがコツ。これが面白くって面白くって道路横断がやみつきになる。バイクのスピードが比較的遅いハノイは初心者向け。つーかホーチミンではかなりの熟練が必要だと思う。何度も寿命の縮む思いをしました。だってバイクのスピードが速いっ。
バイクタクシーでドンスアン市場へ行った。ここでもものすごい人と物。この国はすでに飽和状態なのか?でも買いたいよーなものはひとつもナシ。おやつに杏仁豆腐様のものを発見。食べてみたら豆乳豆腐だった。甘さは意外と控えめでおいしい。1500ドン(約10円)。
お昼はフォーガー(フォー=ベトナム風汁そば、ガー=鳥肉)を食べた。ちなみにボーは牛肉、フォーボーはだから牛肉入りの麺ってことになります。このフォー噂には聞いてたけどとても日本人好みな味でおいしい。レモングラスやらミントやら香葉などなど名も知らぬ雑草?がてんこ盛り。
午後、ハンザ市場へ行こうと歩いていたら、空港からのバス中で知り合ったフランス人3人とばったり会う。そのへんでお茶でもしようと言うことで落ち着いたのがビアホイだった。ビアホイとは自家製ビールのことで1杯だいたい1500〜2500ドン(約10〜20円)くらいで、かなり水っぽい味。道ばたにおままごとのようなほんっとに小さな腰かけ(椅子ではない)とテーブルが並んでいて、ほとんどしゃがむようにしてその椅子に座ってビールを飲む。このビアホイ、どこにでもあってその手軽さからかなり入り浸ってました。社交好きのヨーロッパ人ツーリストのたまり場になっていた。
夜はYouth Hotelのドミトリーで同室になった日本人の男の子二人(それぞれ一人旅をしている)と食事をした。しかし今までいろんなドミトリー泊まったけど、男女混合ってのははじめてで大変驚きました。ハンザ市場の真ん前にある地元の人でにぎわうウナギ料理の店へ。ウナギといっても日本のそれと違ってずいぶん小さい。から揚げにしたものが店先に山盛りになっている。それをおかゆや麺類などの料理に入れるらしい。あたしは春雨の麺(汁ナシ)にそれがのってるのを食べたんだけど、にんにくの香りが効いていてめちゃウマだった。例の雑草はもちろんきゅうりやもやし、ピーナッツなどが入っている。この国は日本円にして100円足らずでおなかいっぱいになれる。
その後今度は昼間のフランス人達とバーへ行く。DJがいて日本とほとんど変わらないようなハウスミュージックが大音量でかかっている。私はてっきり日本人のDJかと思い声をかけたらハノイ出身のベトナム人だった。色も白いしきっとお金持ちなのだろう。Red Bullという日本のユンケル皇帝液のようなもののウォッカ割りを飲む。とってもハイになる。このRed Bullフランスでは売ってないそうで大変ありがたがっていた。???。

●2001/10/19 (金) ハロン湾ツアー(1)

前日シンカフェ(ベトナムの最大手格安旅行会社)で予約を入れておいたハロン湾のツアーに参加する。ハノイに出張に来ているというドイツ人の女の子と部屋が一緒になる。1泊2日だけど2日とも朝6時起きで、決まった順路をひたすら行く流れ作業的な観光はもうたくさんって感じだった。これ以降それまでツアーで見ようと思ってた予定を全部取り止めにする。
世界遺産に指定されているハロン湾はたいへん美しかったけど、日本人としてはさほどめずらしくない景色のように思えた。船にのって島々の中にある巨大な鍾乳洞を2つ見学。日本の鍾乳洞というと時には背をかがめて入るような小さなものが多いけど、ここの鍾乳洞はとにかくデカい。しかもいろんな色のライトで内部が照らされててとってもキッチュ。このへんがベトナムらしい。フランス人の母娘とドイツ人の女の子たちとべらべらしゃべりながら見学。鍾乳洞の中の岩たちが象に見えるだの大砲に見えるだのあれこれ話をしてると、どこからか香ばしいにおいが漂ってきた。「何か吸わないと見えないわね。」たしかに。

●2001/10/20(土) ハロン湾ツアー(2)

午前中はボートでハロン湾見学。昨日よりも天気が良くなっていて見晴しがいい。昨日と似たような洞くつをもうひとつ見学してから、テトビーチというハロン湾の中の島のひとつにある小さなビーチへ。ザビーナ(同室になった子)もパトリシア(母娘の娘の方)もあたしも水着を持ってきてなかったので泳げなかった。足だけ浸かってみる。
帰りの船の上でザビーナ(25)とパティ(37)とひたすら料理の話をする。フランスのカエル料理やカタツムリ(エスカルゴですな)の話やら、ザビーナの大好物ほうれん草のドイツ風調理法などなど。パティのお母さんは日本人はとにかく魚が好きだと思い込んでいて、食事の時にいつもあたしに山盛り魚を取ってくれた。魚は好きだけど他のものも好きよ。

●2001/10/21(日) ヘビの生血なんて予定にないよ〜

ツアーはもうこりごりだったので、空港からのバスの中で知り合ったフランス人3人のうち一人旅をしてるアルノ(32)とベトナム人のスン君(21)とバイクを借りてハノイ郊外の村へ行ってみる。バチャンは日本人に人気の陶磁器の村。スン君の案内で工房を見学した。型に流し込んでおおまかな形を作ってから、ろくろで形を整えている。全部手作業。陶器を焼くための石炭を川べりの船からおろしている人たちも見た。顔も服も道も当たり一面真っ黒になってカゴに入れた石炭を頭の上に載せて運んでいる。そこで働いているのはなぜかみんな女性だった。日本人好みの超カワイイ茶器などの陶磁器もたくさん売られていた。値段も安そう。でも今買物をしちゃうと荷物が多くなって大変なのでホーチミンまでガマンする。
バチャンの小さな路地を走っていたら横の小道から女の子の運転する自転車がいきなり飛び出してきてアルノとあたしが乗っていたバイクに激突転倒!幸いお互いケガはなかったけど女の子が自転車のブレーキが壊れたと言って文句を言ってきた。周りにベトナム人達がたくさん集まってきて大騒ぎ。どう考えても小道から一旦停止もせずに飛び出した女の子の方に非があるというのは、集まったベトナム人たちも同感のようで、結局年長者らしいおばさんがあたしたちをそのまま行かせてくれた。
バチャンの次はレマット村と言うところへヘビ料理を食べに行った。ここではヘビ料理だけでなく、コブラが浸かっている酒を作っているところも見た。びんの中にコブラを形よく立たせて酒を流し込む。箸のような棒でコブラを固定してしばらくは置いとくらしい。他にもカイコ入りのお酒(超キモチ悪い)やらなんやらホルマリン漬けの標本よろしく大小様々の酒びんがところ狭しと陳列されていてたいへん気持ち悪かったです。
ヘビ料理を出す店(といっても一見普通の民家)の玄関先には檻に入ったネコやワシ、その他名前も分からない様々な小動物が待機していた。これホントにみんな食べるのかな。ちなみにハノイでは犬料理も有名です。ヘビ料理はまさにヘビ尽くし。ヘビのスープ、ヘビのから揚げ、ヘビの揚げ春巻き、ヘビの煮物、ヘビのおかゆなどなどこれでもかといわんばかり。ヘビの味は白身の魚のような感じ。春巻きなどは悪くない。けどなんといってもアペリティフ(食前酒)として出されたヘビの生血(何かの酒で割ってある)とヘビの肝のお酒(薄い緑色)は強烈でした。テレビでよく見るゲテモノ食いの番組でこういうのが出てくるとあたしは絶対食べれないと思ったものですが、いざ直面すると意外と貧乏性が働いて飲んじまいました。生臭い。
それにしても値段はベトナム的にいったらかなり高かった。ヘビの浸かっていたお酒のお土産付きで一人当り1000円以上は取られたと思う。ま、しかし大した体験でした。

●2001/10/22(月) 予定変更。

あまりのベトナムの強烈さに滞在をぎりぎりまで延ばすことにする。マレーシア航空のオフィスに行って帰りのフライトを5日ほど後の便に変更する。あーオープンチケットでよかった。
それからハノイ名物ブンチャーと言う料理を食べた。これはそうめんがのびたような米の麺を、揚げ春巻きやミニハンバーグみたいのと一緒にヌクチャム(さっぱりとしたタレ)につけてたっぷりのハーブ(例の山盛り雑草)で食べるというもの。うまいうまい。いろんな種類の雑草がうまい。ミントの葉とか日本にいる時は結構苦手だったんだけど、こっちにきてから大好きになってしまった。しかもものすごいボリューム。これで一人たったの80円くらい。なんということだ。写真はそのブンチャーのお店にて。
午後はビアホイでだらだらだら。先日ホアンキエム湖のそばで会ったハノイの物売りの子供達と仲良くなる。学校に行っている子もそうでない子もいる。靴磨きやポストカード売りなどなど。彼らにとって英会話は死活問題なのでとてもうまい。ビアホイから彼らの仕事振りを眺めたり話をしたりするのがとっても楽しい。

●2001/10/23(火) バベ湖への道(1)

ハノイから北へたぶん200キロほど行った所にあるバベ国立公園へ行く。朝起きるのが遅かったので一日ではたどり着けず、途中タイグエンという小さな町で1泊することに。どこの国でもそうだけど地方の人たちはとてもピュア。ただ食堂で夕飯を食べただけなのに店の人たちはみんな超ニコニコ、別れ際にはかたい握手をしてお別れといった具合。料理は基本的にCOM(米)とPHO(麺)。ハノイで食べたフォーより田舎のフォーの方がぜんぜんウマイ。特に麺が。

●2001/10/24(水) バベ湖への道(2)

一日中バイクで走ってやっと日が暮れる頃バベ国立公園に到着。雨もちょっと降ったりして全身泥だらけになる。
地方に行くと英語がまったく通じない。途中小さな集落で休憩をした時、集落の人たち全員じゃないかというくらい15人くらい集まってきて、ベトナム語の会話集を片手にいろいろと会話をしてみた。何歳ですか?とか名前は何ですか?とか大したこと話してないのにみんな異様に楽しそうでこっちまで楽しくなってくる。子供達がカワイイ。

●2001/10/25(木) バベ国立公園

ガイドとボートを雇ってバベ国立公園の中を回る。公園と言ってもほとんどジャングル。自然保護地域みたいな感じ。ボートに乗って川をさかのぼる。「地獄の黙示録」でマーロン・ブランドを信奉するベトナム人たちが今にも踊り出てきそうな風景。途中大きな洞穴の中で上陸してコウモリの大群を観察。鳴き声と臭いが強烈。落とし物が恐くておちおち見ていられなかった。さらに川をさかのぼってタイ族と言う少数民族の村を訪ねた。家にあがらしてもらってお茶とバナナをごちそうになる。彼らは田んぼをたくさん持っていてそこでとれる米を市場で売って暮らしているのでたいへん裕福なのだそうだ。家は大きくてテレビなんかもある。子どもがたくさんいてみんな人懐っこい。ガイドに雇った彼は少数民族のキン族出身で、前は教師をしていたとのこと。
さらに川をさかのぼり店でお昼ごはんの予約をしてから大きな滝を見に行った。ほとんど道とは思えない道を入っていく。雨がやんだ後で岩がすべりやすくまたまた泥だらけになる。滝はそれなりに大きくてダイナミック。小一時間岩と格闘して店に戻るとお昼ごはんができていた。焼いた川魚、じゃがいもと豚肉の煮物(肉じゃがみたい)レバーともやしの炒めもの、青菜やきゅうりのにんにく炒めなどなどとご飯。写真に写っているのがそれです。米ととうもろこしでできた日本酒のような酒をしこたま飲まされる。(ごきげんなあたしも写真に写ってます。)この地方では乾杯のことをカップチャー(カップ=盃、チャー=盃を触れあわせる音)というのだそうだ。べトナム料理はとにかく日本食に似ている。ここでは日本の古漬けに似た味の白菜の漬け物のようなものまであった。ガイドの兄ちゃんはこの漬け物と酒が合うのだと言っていた。食文化のルーツが一緒なのでしょう。
昼食の後再びボートで今度は川からバベ湖へと入っていった。たいへん静かで美しい湖での一服。湖をめぐってボートからおり、バイクでホテルのある所まで戻ってこのツアーは終了。このバイクの運ちゃん、ニワトリを1羽ひき殺した。振り向きもしないことから日常茶飯事なんだろうけど、恐れていたことがとうとう現実になってしまって(ニワトリやらなんやらバイクの前をいろんな動物たちがしょっちゅう横断していた)とても悲しかった。自転車激突に次ぐあたしの遭遇した2件目の交通事故でした。あーでもまだニワトリでよかったかも…。
明日一日で何とかハノイまで戻れるように今日のうちにバッカンという町まで行っておきたい。ひと休みしてすぐに南へ向かった。

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