執筆途中なんですけど、工事中って書くと読んでもらえないのね……

初心者のための鑑賞ガイド(のつもり)

鑑賞の心構え

「新世紀エヴァンゲリオン」とかいう舌を噛みそうな名前のアニメ が人気を博しているらしい。しかし、はまってるやつらの話を聞い ているとどうにも理解できない。難しそうな言葉が一杯出て来るし、 人間関係がどろどろして複雑だったりしてちらっと見たぐらいじゃ わからないらしい。でも何とかして話の概要を掴んで、映画を見る ために千数百円投資していいものかどうか知りたい。そういう人も 多いでしょう。

そして、そういう人がインターネットに散らばるWWWページ群から 「要するに何なのか」を知ろうとしても、謎本の様に掘り下げちゃっ たページや、ストーリーレビューといってもやたら情報量があって 読みごたえがありすぎるページばかりで、素人の「要するになんな のか」という疑問に答えてくれるページは殆どありません。

見てみりゃ話が早いんですが、ぜんぶで30分×26話、計13時間もあ ります。

世の中には、分析とか解題とかをやってくれる人がいて、ユング心 理学を使って物語の奥に潜む構造とそれがなぜ人の感動を呼ぶのか を分析してみせてくれたりします。当然ながらそういう分析には高 い価値があるんですが、物語を味わう前にそういうのに触れてしま うと、物語を彩っている表現や設定や話の展開などを純粋経験とし て味わうことができなくなってしまいます。はっきり言って、そう いうのってアンチョコなんですよね。先に見たらずるいじゃないか。 そういう話。

このページでは、妙にはまり込まずにエヴァという物語をテキトー に楽しむために素人はどのように味わうべきか、あるいは、テレビ シリーズ全編を見る手間を惜しんで、しかし人の話には適当に加わ りたいという欲求に答えるための資料となることを目指しています。


第壱話から見てみよう

目標は、いかに手を抜けばエヴァという物語の雰囲気を知ることが できるか、です。どこから手をつければ全部見なくて済むか?

まず、オープニングから見てみましょう。オープニングは、テーマ 曲に乗せて物語の大筋に関係の深い映像が流れます。まあダイジェ ストみたいなもんです。


※但し、自称お宅研究家の岡田斗司夫氏によれば、初代ガンダムの
  ころから、制作者がスポンサーであるおもちゃメーカーをだます
  ことを覚え始めたのだそうで、実際、ガンダムのオープニングテー
  マで「正義の怒りをぶつけろ」などと勧善懲悪っぽい雰囲気を醸
  し出しておいて、実は物語が進むにつれて敵も味方も矛盾をはら
  んで勧善懲悪とは似ても似つかない話になるんですが、本当のダ
  イジェストであれめくらましであれ、オープニングは「この話は
  こんな感じですよ」という看板みたいなものには違いないのです。

のっけから、この歌が、特異です。

ふつう、ロボットアニメのテーマ曲は二通りに分類できます。一つ は、歌詞にアニメのタイトルやロボットの名前が登場するもので、 いかに主人公ロボットが強いか、または、敵が悪であってそれを滅 ぼすべしと歌います。平たく言えば軍歌です。「戦え! ○○」とい うわけです。もうひとつは、アニメのタイトルもロボットの名前も 歌詞に登場しないもので、アニメの主題歌としてよりはむしろふつ うのポップスとして作られたり既にあったものを使ったりし(その 曲を出したり売ったりするためのタイアップですね)、多くは夢を 追いかけんとする主人公の意思表明が歌われます。ラブソングの形 を取ることもありますが、これもまた多くは「がんばってね」とい う意味のものです。このいずれにも共通するのは、ここで歌われる のが戦うための動機付けであるということです。

さて、エヴァです。何とあろうことか、母親がまだ小さな子供に向 かって、それも人生の厳しさについて語りかける歌です。翼を得て 飛び立つとか神話になれとかいう文言でわずかに何かアクションを 起こすべきみたいな雰囲気がにおわされはするものの、戦いに身を 投じるための動機は明示的には示されません。全然ロボットアニメっ ぽくありません。特異ですね。特異だということはきっとそこに意 味があるということで、この特異性はきっとこの物語のテーマに直 結するに違いありません。こんな特異なオープニングがスポンサー 向けのめくらましであるはずはない。この物語における戦いはほか のロボットアニメとは違う意味を持つのでしょう。何かを勝ち取る ためになされるのではないらしい。そんなことを伺わせます。

次に、オープニングの映像です。何と、敵が全く登場しないし戦闘 シーンもほとんど現れません。これも特異です。ロボットアニメと いうのは戦闘シーンが重要な見せ場ですから、敵をたたきのめすシー ンとか、(あれば)変形・合体のシーンとか、あるいはせめて攻撃を 繰り出すシーンかかっこいい見得を切るシーンをよく動く絵でオー プニングに盛り込んで視聴者を引きつけようとするのがふつうです。 が、エヴァのオープニングには戦闘シーンは全くありません。変形・ 合体もありませんし、見得を切るシーンも、見得とは言えないよう な短いカットが一瞬現れるだけで、これもほとんど皆無と言えます。 代わりにオープニングで強調され、また、動きがあるのは登場人物 ですね。それから、何やら怪しげな図形もそうです。コマ送りで見 ろと言わんばかり短いカットで却って強調される大写しの文字もあ ります。これほんとにロボットアニメなのかしら? そうそう、「監 督 庵野秀明」という、市川昆風レイアウトの白抜き極太明朝の文 字がこれまた大写しされます。しかもこれ、オープニングの後半、 時間が足りなくなったのかと疑うくらいカット割りが細かくあわた だしくなる中で結構長時間表示されます。ということは、後半のカッ ト割りのあわただしさはたぶんわざとだし、長時間のさばる(笑)監 督の名前は……すごい自己顕示欲だ。この物語のテーマは「俺が庵 野だ」か? でもガンダム世代でオリジナルビデオアニメなど見ない 人は庵野なんて人知らないんですよね。私も知りませんでした。

ちょっと考えてみましょう。オープニングに敵が登場しないのは、 敵が少なくとも工業製品じゃないことを示してます。ガンダムにそ の系譜が始まるいわゆる「リアルロボットもの」とは違うんですね。 立ち回りや見得を切るシーンがないのは、登場人物が強調されてい るのとあわせて、この物語においてロボットは脇役に過ぎないこと を示しています。よくタカラがスポンサーになる勇者シリーズとも 違うんですね。後半でいろいろと怪しげな文字や絵があわただしい カット割りで示されるのは、これらが物語の筋に強く関わってくる 要素ではあるんだけどデコレーションに過ぎないからあまり一つ一 つを深く突っ込むなということを示しているのか、それとも、物語 の前半では登場しないからちらっと見せるだけにして後半で意味が わかるということなのかな。

ともかく、CM明けを待って本編を見てゆくことにしましょう。

いきなり、「時に、西暦2015年」という白抜き極太明朝の文字。普 通はとっぱじめにファンファーレのようなBGMとともにエピソード のタイトルを持ってくるんですが、BGMが鳴りません。あっさりし てますね。ふーん、そう来るか、と、この字幕を一瞬で味わってい ると、ヘリが見下ろす、ビルの生えた海の中を何か黒い人型のもの が進んでゆきます。海中に沈んだ都市の跡ですね。何かカタストロ フィの後なんでしょうか。海岸沿いの道路には戦車がずらっと並ん で砲塔が沖を睨み付けている。さっきのを待ち受けてるんでしょう。 陸上の街らしいところには人気がなく、警報の発令を伝えるアナウ ンスだけが響き渡ります。公衆電話にも不通のアナウンス。「だめ だ、やっぱり来るんじゃなかった。」主人公らしき少年が受話器を 置きます。……なんとなく映画的な作りですね。

コンピュータの画面上に表示されているらしい、さっきの黒いのの らしい侵攻予想図とともに、軍隊らしき組織の発令所のような場面。 偉い人っぽい二人の、あまり緊張感のない会話「15年ぶりだねぇ」 「ああ、間違いない。使徒だ」のあとに、市川昆風レイアウトの白 抜き極太明朝で「第壱話 使徒、襲来」……あ、さっきの「時に、西 暦2015年」じゃなくてこっちがエピソードのタイトルでしたか。エ ピソードのタイトルを出す前に前置きをやるのはよくあるパターン なんですが、これはちょっと長い。何かやたらもったいをつける見 せ方ですね。きっとほかにもたくさんのことを示すのにやたらともっ たいをつけるのでしょう。しかし、状況説明に文字を使うのは、ナ レーションを使うのよりは視聴者が冷めなくていいですね。一瞬で 済みますし。この辺も映画的です。

それにしても、絵がきれいですね。特に、コンピュータグラフィッ クス(CG)の取り入れ方がよくできています。「レンズマン」を見た ときに感じた違和感、いかにもCGでござい、みたいなわざとらしさ (あれシェーディングのやりかたがいけないんですが、まあ昔のこ とですね)がなくて、セルアニメの絵との組み合わせに不自然さを 与えないように、よく工夫されている、というか、適材適所を考え ています。アニメにおけるCGも道具として手に馴染んできたという ことなのでしょう。

シーンの組み立ても、いい感じですね。間の取り方、鳥や静物の使 い方、人の息遣い、視線や表情の微妙な動き。心理描写に力を注い でいるのがわかります。視聴者をして登場人物の内面に注目するよ うにしむけようとしているんでしょうか。


…鋭意執筆中…


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last update: $Date: 2002/12/10 18:16:35 $


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