1995/10/31 谷村有美 神奈川県立県民ホール・大ホール
CONCERT TOUR '95〜'96 「圧倒的に片想い」
1階5列45番
三浦敏孝, 早稲田大学
miura@muraoka.info.waseda.ac.jp

●開演前

 米倉さんによる座席調査によればML関係者が結構いそうな感じな
ので終演後にオフミができないか(1人だといつも晩飯を食いっぱぐ
れるので)と、座席調査の結果のプリントアウトを頼りにMLメンバー
を探す。顔を知っているのは山本さんだけなので、ほかは座席から
見つけるしかないのだが、開演10分前になっても皆さん席に着いて
ないようで、結局話ができたのは工学社の山本さんとソニーの成瀬
さんだけだった。

●座席

 昨年の実績が10列目だったので期待していなかったが、今年は5
列目である。引きが強い。但し、会場に着いてみると、谷村が降り
てくるのとは反対側なんだな。ステージに向かって左側の通路脇2
列目が取れている山本さんが「よりステージに近い」と「谷村が目
の前を通る」の2重にうらやましい。「卒倒しそう」と山本さん。
いーなー。(^^;
 なお、ステージ上の人はちゃんと立体感をもって見える。谷村の
表情や視線も追える。但し、泣きぼくろはステージ用の厚い化粧の
下に埋もれていたようだ。
 スピーカーの正面なので耳が心配。
 隣の席は空いている。少し広くてラッキー。前の列左側に身長と
座高の高い人がいる。ステージ中央にちょうど重なる位置なのでちょっ
と警戒(したところで抵抗のしようもないのだが)。

●開演

 幕にでっかいハートマークと「Yumi Tanimura」のサインらしき
筆記体で書いてある。
 会場の明かりが落ちるとこれをステージ両脇のバリライトに横縞
状のフィルタをかけたので下から照らす。少しして幕が開くだけの
シンプルなオープニング。
 衣装は青い、絹のような光沢の長いワンピースの上に、アールヌー
ボー状の花柄のシースルーのこれまた長い、何というのか知らない
がワンピースのような形状の、しかし背中が10cmくらい切れていて
ひもで結んでいるエプロン状の物を着ている。首には青い光沢の太
いチョーカー(コンサートグッズにあるチョーカーってこれか?)。
 ステージ中央のグランドピアノが今日のコンサートの展開を期待
させる。

1. 午前0時のオアシス

 挨拶というかジャブというか。声はちゃんと出ている。カンペに
目をやるためかときどき目を伏せる。露骨に下を向くこともある。
これはいつものこと。歌詞間違いがたまにあるのもいつもの通り。
 間奏で水を一口。のどにエンジンをかけてから出てくるとか水を
補給するタイミング配分とかいった技術を身につけたようだ。声の
出方に関しては今日は安心して聞けそう。
 藤稜さんがヒゲを短くしてかわいらしくなっている。岩見さんは
少し太ったみたい。田中さんはヘッドホンをしている。今日もシー
ケンサに合わせて叩き通すのか。

2. 最後のKISS

 アレンジは去年と同じ。しかし先にこれを持ってくるかね(とそ
の時は思った)。

(挨拶)

3. もうすぐあなたが帰ってくる

 曲順の中でどこにこの曲があったか全く思い出せなくて、山本さ
んのレポートによればここだったらしい。こんなに早かったっけ?
 もうこの辺からたまにしゃがんでは最前列付近へ愛想を振りまい
ていたような気がする。これまでのコンサートレポートは全部読ん
でいるためそういうことがあるということは知っていたが特に「コー
ナー」を設けるわけではなくこれをやるということなのか。最前列
の人たちがうらやましい。
 「もうすぐ」を客に歌わせるお約束が入る。そんなこと突然やら
れても誰も知らないのですぐには反応できない。定着するのだろう
か?

4. 愛しているのに

 この曲、アルバムの中で異色というか、15〜20年前の歌謡曲のよ
うな感じがしてあまり好きになれなかったのだが、サビ以降の甘え
るような声にしばし聞き入ってしまった。そうか、この曲にはそう
いう楽しみが隠されていたのか。(^^;

(MC)

 今日は特に特別な日というわけでもないのでかなけんに来るとい
つも出る、「懐かしい」話。

5. 雪の朝

 シングル「MOON」を買わなかった私はこの曲を聞くのは初めてで
ある。ぼーっと聞いていた。いい曲。シングルを買いたくなった。

6. 何も聞かないで (弾き語り)

 いよいよピアノの前に座る。ピアノの前の谷村は明らかに表情が
変わる。すごくうれしそう(なんて単純な言葉にすると薄っぺらに
なってしまうが、歌わず手だけ動かしているときはそれはそれは違っ
た表情になる)。演奏にもそれが現れている。心が弾んでいるよう
な感じが伺える。聞く方も浸る。

(MC)

 念願かなってコンサートでグランドピアノを弾けることとなった。
自分のピアノを持ってツアーを回りたかったが重いので、会場毎に
備えつけのピアノを借りることになった。
 かなけんのピアノの説明書とおぼしきものが存在するらしく、そ
れをネタにしてちょっとずつ演奏を交えた話が続く。ピアニスト谷
村としての一面がのぞく。
 このピアノはできてまだ4年、このピアノの歴史はこれからでき
ていきます。「あ、そうか、ほんと音が若い。」
 これまでにこのピアノを弾いたアーチストたち: ジョージ・ウィ
ンストン(LONGING/LOVE)、リチャード・クレイダーマン(渚のアデ
リーヌ)、「あ、ここにもいた」中村紘子(昔ネスカフェのCMでやっ
てたやつ)、ブーニン。それぞれ名前が出る毎によく知られたフレー
ズを弾いてみせる。
 同じショパンでも中村紘子はかちっと(譜面通りのリズムという
ことらしい)弾くのだが、ブーニンは叙情派なので……と言って、
同じフレーズを、1拍目のあと首を一周回してから続きを弾く(フェ
ルマータをちりばめたような弾き方をするということらしい)。

7. 逆ふたまた (弾き語り)

 アルバム「愛する人へ」でふたまたをかける女の子の歌を書いた
ので、今回はふたまたをかけられちゃう女の子の歌、と能書き。

8. 愛情と友情 (弾き語り)

(MC)

 代官山には本当にフレンチレストランがあって……という「愛情
と友情」の解説を少しした後、ステージを降りて客席へ(オーっと
いうどよめきが沸く)。あー、山本さんうらやましい。
 で、さあ降りようというところで階段を踏み外してこけたらしく、
突如谷村の姿が消える。なんかレポート読む限りそこここの会場で
こけてるようだが、あの底が厚くてヒールの高い靴がいけないんじゃ
ないだろうか。
 今年のツアーのテーマは「あなたのおそばに」ということで、少
し練り歩いている間にステージ上では中央に椅子が並ぶ。そこへバ
ンドメンバーが軽装備で配置につく。

9. Not For Sale (アコースティック・御中元バージョン)

 メンバー紹介。サックスの藤稜さんがタンバリン、コンピュータ
/シンセサイザの中村さんがポコポコ鳴らす金属の2連の鐘(アゴゴ
てんだそうです)、キーボードの青柳さんがアコーディオン、ドラ
ムスの田中さんが腰から下げる太鼓(スルドてんだそうです)、釣り
が本職と称するギターの岩見さんがアコースティックギター、ベー
スの井上さんもアコースティックギター。「谷村バンドにこんなに
上手なフォークギタリストがいたなんて、それもトラディショナル
フォークよ。」だそうで。
 日比谷野音で聞いたときより少しだけ派手めのアレンジに感じる。
Boomの「風になりたい」を想起させるような感じ。
 客席へ降り、サビを客に歌わせる。これもお約束になるのだろう
か。

10. MOON

 これもアコースティックなアレンジで、田中さんのパーカッショ
ン(ボンゴ、かな)がいい味を出している。

11. 恋に落ちた

 この辺はアコースティックアレンジのコーナーなのか、今度はピ
アノに青柳さん、それにソプラノサックス(? オーボエかな)の藤稜
さんだけの伴奏。
 青柳さんのピアノによる前奏からこの曲だとわかってしまったの
で脊髄ショックはなかったが、谷村がピアノ脇に立って歌っている
ため声が十分出ていて、一番の聞かせどころのように見える。聞き
惚れる。このスタイル、夏のイベントでの矢野顕子の伴奏に味を占
めたのか。

12. Instrumental part I

 青柳さんと藤稜さんを残して谷村は袖に消える。残った青柳さん
と藤稜さんのセッションがしばらく続いた後青柳さんが外れて後へ。
その空いたピアノに衣装換えを済ませた谷村。藤稜さんのソロから
の流れでInstrumental part Iが始まる。
 ラジオで「バージョン1.7」と称していたので期待していたとお
り、アルバムで聞くよりもうんと豪勢に仕上がっている。
 神経が手に集中しているらしく上体の姿勢と顔の表情が固まる場
面(一昨年の野音での「Oh my god!!」のピアノソロ拡張部で見たよ
うな表情)があったり、そうでないときはまさにピアニスト谷村の
面目躍如というか、田村さんによる戸田のレポートで「フュージョ
ンバンドかお前らは」という表現があった(というか谷村以外はそ
の筋の猛者ばっかりだから当たり前といえば当たり前なのだが)が、
「もうすぐあなたが帰ってくる」をいつやったのか忘れたのはこの
演奏のせいだろう。短期記憶が飛ぶくらいかっこいい演奏。

13. 優しいのにも程がある

 「恋に落ちた」もそうだったが、そのものずばりじゃないんだけ
ど聞いているうちにこの曲だとわかってしまう不思議な導入部から
イントロに入る。この曲からいつもの調子に戻った感じ。歌詞間違
いもいつもの通り。

14. 好きこそ物の上手なれ

 「今年も懲りずに好きこそ物の上手なれのお時間がやって参りま
した。」去年ほどたくさんはやらないが、しっかり森の熊さん、線
路は続くよどこまでも、勉強しまっせ引っ越しのサカイと新ネタを
含めてやっている。

15. 圧倒的に片想い

 「きっとだめかもしれない」の間奏で客席へ降りて練り歩き、女
の子を探しては「今日はだれと来ましたか?」とインタビュー。例
によって八王子ほどうまくいかない。今回の収穫はカップル2組、
姉弟が1組。やはり前の方には1人で来た子が多いようで。日立軍団
のいたあたりに広島から来たという子がいて、「遠かったねー」と
抱き締められたらしい。その子は感きわまって泣いてしまい次の曲
が終わるくらいまで立ち直れなかったそうな(こういうの、客の中
に埋もれてしまって、わずかにスポットライトで谷村がどこにいる
かだけがわかる程度なのでもどかしい)。

16. 信じるものに救われる

 前の曲の最後のサビのメロディーがこの曲のサビと同じという遊
びがあるのでここに配置するわけだが、以前のレポートを読む限り
そのままつながってこの曲にかかるのかと思っていたらさにあらず、
しっかり前の曲が終わって一段落してから始まった。以前のレポー
トにあった「ロマンスの神様」というのもどこでどう入ったのかわ
からなかった。アレンジがかっこよくなったのは確かにそうだけど。

(MC)

 恒例、第1幕最後の曲の前の長いMC。
 ツアーをやる度に新しい発見があって、デビュー曲であるNot
For Saleを歌ったころは寂しかったんだなあという感慨があるのだ
そうな。

17. あなたに出逢えて

 終わってからバンドメンバーを一人一人紹介して、谷村を残して
袖へ引っ込む。残った谷村は会場内各方面へ向けて一通り愛想を振
りまいて袖へ。

(幕間)

 今年のツアーは谷村のピアノが主役という構成のせいで第2幕を
アンコールと称しやすくできている。アンコールにバンドメンバー
が出て来ないせいだ。ステージの明かりがわずかに残っているのだ
けがアンコールっぽくなくて、ローディーが岩見さんのギターを片
付けたあたりはアンコールっぽさを出していた。
 ジーパンに、「圧倒的に片想い」のブックレットの写真に使われ
ていた昆布のような柄のプリントのTシャツに赤いチェックのシャ
ツといったいでたちに衣装を換えて谷村登場。

(MC)

 20分近い長いMC。アルバムが発売中、ビデオと写真集が出る、ビ
デオの初回特典は1曲多いらしいという告知。宣伝のためのCM録り
時に台本に「徹底的に片思い」とあって笑った話。

E1. ずっと忘れない (弾き語り)

 人間は椅子に座って歌うと腹が折れ曲がって横隔膜の自由度が減
るため声が出にくくなる、ないしは喉だけで歌うようになって広帯
域成分(つまりノイズ)が増えるものだが、今日の谷村は弾き語りで
も声量のある美しいボーカルを堪能させてくれた。アルバムでボー
カルを立てる試みをしたのがコンサートでも活かされているという
ことか。
  最後に、マイク無しの生声で「どうもありがとう。またね!」

以上、18曲

 曲ごとに長い文章として感想を書けなくなるくらい短期記憶を吹
き飛ばしてくれる、それくらい聞きごたえのある素晴らしいコンサー
トであった。これで質の低い野次さえなければ言うことなしである。
あの野次(合いの手なんて上等なもんではない)、年々酷くなってい
るので何とかして欲しいものである。みんなでアンケートに「野次
を何とかしろ」と書きましょう。

●終演

 3本締めが非常に邪魔っけに感じる。その後の「本日の公演は全
て終了しました」のアナウンスがあまりにも絶妙のタイミングで入
るのでなおさらそう感じる。まあいい。
 開演前にほとんどMLメンバーに会えなかったので、期待しないで、
しかし周りをきょろきょろ見回しながらゆっくりロビーへ。ここで
うかつだったのは、どこに集まるかを山本さんと開演前に打ち合わ
せるのを忘れていたことと、終演後山本さんに声をかけずにロビー
へ出てしまったこと。
 出口近くでソニーの成瀬さんと日立の斎藤さんはじめ4人とが集
まっていて、成瀬さんに呼び止められた。よかった、これで軽いオ
フミができる。
 係員による追い出しが始まるまで待ってみたが山本さんは見つか
らず、そのまま外へ。成瀬さんは車で来ていたので急ぐとのことで、
先に帰る。5人で飲み屋を探して関内方面へ。

●軽いオフミ

 関内駅近くの路地の焼鳥屋に入る。日立軍団は頂いた名刺による
と依田さん、斎藤さん、米谷さん、梅津さんと判明。ほとんど「はぁー」
と脱力してばかりであまり盛り上がったわけではないが、次の相模
大野で斎藤さんと田村さんがまたステージに向かって左側の通路脇
だそうな。うらやましい。

●次は……

 私は次は相模大野。通路脇ではないものの、何と1列!が取れまし
た。これで前に0列が存在したりしなければ正真正銘1番前です。楽
しませてもらいます。但し35番なので右側の通路付近なんですよね。
この位置だと弾き語りの間は谷村がピアノの陰で見えなくなりそう
なのが気がかりなんだな……。

以上

1995/10/31 28:03


●後日談

 実は、本ドキュメントはMLに流して以降幾つかの訂正を経ていま
す。細かいところではジョージ・ウィンストンが最初思い出せなかっ
たりアゴゴやスルドがわからなかったりとかありましたが、もっと
大きなところで、相模大野のコンサートの後、「あなたに出逢えて」
は弾き語りではなく、かつ、バンドメンバー紹介→バンドメンバー
が袖へ引っ込んだのはそのあとだったという指摘を受けました。こ
こいら辺の記憶は非常に曖昧で、確かバンドメンバーが引っ込んで
から谷村が何かやったような気がするんですが、どうも錯覚だった
ようです。さらに、「あなたに出逢えて」と「Not For Saleを歌っ
た頃は寂しかった」MCの順序も自信ありません。
 この辺りの記憶のはっきりしている方、教えて下さい。


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last update: $Date: 2007/11/24 06:45:53 $


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