1995/11/24 谷村有美 グリーンホール相模大野・大ホール
CONCERT TOUR '95〜'96 「圧倒的に片想い」
1階1列35番
三浦敏孝, 早稲田大学
miura@muraoka.info.waseda.ac.jp

●開演前

 大学での用事を早々に済ませ、少し身軽になるために一時帰宅。
それからおもむろに相模大野へ向けて出発。今日はときどき天気雨
がぱらつくが、本降りになりませんように。
 開演20分前、割合ぎりぎりの範疇と思われる到着。グリーンホー
ルの建物に入るとき、目の前に田村さんと思われる人影を発見。但
し呼んでみても気づく様子がないので、入口でカメラを預けた後、
そのままグッズ売り場まで追跡。ようやく挨拶。
 今回はじめて、コンサートパンフというものを買うことにした。
MLで一部に絶賛する人がいたことと、「Obrigada」に動かされたた
め(本当はもう少し複雑な心境の変化があった)である。というわけ
で、パンフセットを購入。結構痛い支出。
 グッズ売り場を出て田村さんを追跡すると、ロビーの一角に市川
さん、尾林さんなどMLの濃い面々が集結している。そこで軽く挨拶
だけ済ませ、会場へ。
 会場に入って最前列にある自分の席に荷物を置く。通路をはさん
で隣にはソニーの北瀬さんと筑波大の須田さんが来るはずだが、ま
だいない。しばらくして現れた須田さんと北瀬さんに挨拶する頃に
は、実は周りに結構MLの面子がいることに気づく。名古屋組も結構
いるではないか。

●座席

 近い。ステージはすぐ目の前で、腰ぐらいの高さというか。座席
に座ったときちょうどステージの床面が目の位置のすぐ下に来る。
よくできていると感心する。
 日立の斎藤さんから、ある会場では谷村が階段と反対側から客席
の方へ飛び降りたという情報がもたらされたが、仮にそれがここで
起きてもそれはそれでうれしいけれど、飛び降りられると目の前を
一瞬にして通過されてしまうので、10円安といったところか。
 この席はステージ上の人が等身大の人間として見える。自分と同
じ大きさの人がすぐ手の届くような距離のすぐそこで動いていると
いうことがわかる。素晴らしい。

●開演

1. 午前0時のオアシス

 谷村が近い。但し、あまりに近いため、ステージの向こう端へ行
かれるとそっちへ首を振るのが面倒なのと、向こうに行っていると
きにこっちへ視線を投げることはないだろうという予測から、バン
ドメンバーの動きを見に行くようになる自分に気づく。そうでなく
ても、ステージ上に立っている人の視線は5〜10列目くらいへ向け
て投げるのが自然なわけで、従って直下に位置する最前列へ視線が
落ちてくることはほとんどないのである。
 ヒゲを短くしたらどう見てもラサール石井になってる藤稜さん、
ソロでない演奏中はまじめな顔がちょっと怖い青柳さん、ときどき
うれしそうに首を動かす田中さん、終始淡々としてる井上さんと中
村さん、演奏中の表情が実に気持ちよさそうな岩見さん。
 同時に、谷村の衣装の細かいところがわかる。ラメのような光沢
の材料が3列に並んでいる青いチョーカー、左耳だけの、チョーカ
ーと同じ青い色のイヤーカフス、おなかの辺りに、どうやってつい
てるのか判然としないが腕時計くらいのサイズの、懐中時計のよう
な形状の時計。底厚3cm、ヒール高6〜7cmくらいの白い靴。
 泣きぼくろは、ステージ用の厚い化粧の下に埋もれていると思わ
れる。どこにあるのかわからない。お肌は……ちょっと荒れてるの
かな。少ーし凸凹が観測される。
 声は、どうも広帯域(つまりノイズ)成分が多く、ひらたく言うと
今日の声はややハスキーだ。少々のどを湿らせてもかわりばえしな
い。どこかで声を枯らしたのか。
 照明の具合により、ステージ上の人の立体感がなくなることがあ
る。ちょっと勿体ない。
 音響は、スピーカからの音が私のいる近傍の空間の脇を通過して
いくような感じで、耳に無理をさせないで済むのがありがたい。
 ステージ床面に張られたカンペは、意外に少ない。中央の、ボー
カル用の返しのスピーカの間に30cm角くらいのが2枚、黒地に白で
おそらくブラックライトで蛍光を発するように作られた、高さ1cm
くらいの文字で、あまりびっしりという感じでもなく書かれている
もののほかは見当たらない。中央を外れた位置で下を向いてもそれ
はカンペを見ているわけではないことがわかった。お見逸れいたし
ました。

2. 最後のKISS

(挨拶)
 挨拶の間、藤稜さんの脇へ青柳さんが降りてきて話をしていたら
しいのに谷村が気づいて、「バンマス、そこで何してるの。打ち合
わせ?」「いえ、雑談です」「雑談? やめてよ、やーねー。」

3. もうすぐあなたが帰ってくる

 「もうすぐ」で客に向かってマイクを向けても、やっぱりいきな
りは反応できず、しかもたった一言なので、外したと思っているう
ちに通りすぎてしまう。

4. 愛しているのに

 サビのところでマイクスタンドをスタンドの足の一本を軸に回し
てみたり、腰を少し落としてみたり、飢えてる女を演出する踊りは、
少しは(「おぉおぉ、やってるやってる」と温かく見守れる程度に)
そそるものがある。

(MC)
 よく覚えていないが、ほとんどなかったような。

5. 雪の朝
6. 何も聞かないで (弾き語り)

(MC)
 ピアノの前に座って、いつものようにぽろぽろ弾き、「いやー、
幸せなんですよ。皆さんも幸せ見つけて帰ってくださいね。」
 ピアノの前に座られるとピアノの陰で谷村の顔が見えなくなるの
ではないかと心配していたが、うまくできているもので、しっかり
谷村の顔は見える。とてもうれしそう。
 「何も聞かないで」との順序がもはや判然としないが、グリーン
ホール相模大野のピアノの解説。スタインウェイのDの200何とか型。
できて5年10カ月の若いピアノ。これまでにこのピアノを弾いたア
ーチストたち: リチャード・クレイダーマン(渚のアデリーヌ/小さ
い頃、デパートの屋上で、英語で少し挨拶したあと会話がとぎれて
しまって、イヤリングを外して「いいから、いいから」と強引に渡
した話)、久石穰、中村紘子(ネスカフェのCMの曲・岩見さんがギタ
ーでフォローして谷村の「ダバダー、ダバダー、アー」までで受け
を取る)、「キャー、すごーい」といって客に当てさせた矢野顕子、
ブーニン(中村紘子との比較/このピアノをえらく気に入ったらしく
演奏会の後1時間くらい弾いていた話)、羽田健太郎。
 「逆ふたまた」のいつもの能書き。

7. 逆ふたまた (弾き語り)
8. 愛情と友情 (弾き語り)

(MC)
 「もっとおそばに」というわけで、ステージ向かって左側の階段
に腰掛け、その辺の客に話しかける。階段付近に座っていた人はグ
リーンホールの職員であるらしい。最近の事件から、Windows95発
売の喧噪に関する話。関連して、昔、カセットテープを使っていた
ようなパソコンでブロックくずしを作ろうとしていたら、ボールを
ラケットで打ってからブロックに当たるまで(を組むのに、か)3カ
月くらいかかったらしい話(これも1/4則だろうな)。KDDからの値下
げを伝える電話オペレーターの話を最後まで聞いた話。
 話している間にバンドメンバーがステージ中央に椅子を並べて集
結。その中央へ谷村が移動し、メンバー紹介。サックスの藤稜さん
がタンバリン、コンピュータ・シンセの中村さんがアゴゴ、キーボ
ードの青柳さんがアコーディオン。ドラムスの田中さんは「それは
何ですか?」とマイクを渡され、訥々とした言葉でスルドの解説。
そのあと、客を煽ろうとステップを踏んで前へ出ながらスルドでリ
ズムを刻むが客がついてこず、「あ〜」と小さく弱気な声を上げる。
少し続けて、客から手拍子が起こり、切れたスルドを披露。「顔で
弾くギタリスト」岩見さんがアコースティックギター、「こんなに
優秀なフォークギタリストが谷村バンドにいたなんて発見だった」
井上さんもアコースティックギター。

9. Not For Sale (アコースティックバージョン)

 詩の「Not For Sale」という部分を客に歌わせるところでも客席
へは降りてこない。私としては目の前に居続けてくれるのでうれし
かったが、ちょっと物足りない。

10. MOON (アコースティックバージョン)

 ここで、シースルーのエプロン状のものは脱いでいて、ノースリ
ーブの青いワンピースだけになってることに気づいた。

11. 恋に落ちた

 青柳さんによる、それ単体で聞かされてもこの曲の前奏だとは全
くわからないはずなのに流れでこの曲だとわかってしまう不思議な
前奏から始まり、谷村のボーカルのパワー全開。流れでこの曲だと
わかってしまっているため脊髄ショックというわけにはいかないが、
じわじわ染みてくるパワー全開のボーカルをなるべく脊髄で聞く。
いい。
 終わると谷村が袖へ引っ込み、藤稜さんと青柳さんのセッション。
青柳さんも外れて藤稜さんのソロから、衣装換えを済ませた谷村が
登場してピアノの前に座り、次へ。

12. Instrumental part I (バージョン1.7)

 ピアノに向かって、あまり表情を変えずに、かくっ、かくっ、と
首を振りながら弾く谷村は、「それっ、それっ、これでもかっ」と
ピアノに挑んでいくようで、凛々しい。

13. 優しいのにも程がある
14. 好きこそ物の上手なれ

 線路は続くよどこまでも、ヤン坊マー坊天気予報のみのコンパク
トな好き物のコーナー。

15. 圧倒的に片想い

 「きっとだめかもしれない」の間奏で、階段側から悪戯っぽい表
情を見せながらじわじわこっち側へ移動し、目の前でステージから
飛び降り、客席練り歩きへ。もうすごい目の前を通ってくれるんだ
けど、一瞬にして通りすぎられちゃうから、近さの実感がわかない
のよね。わずかに、底が厚くヒールの高い靴のせいか、背が私とほ
とんど変わらず(身長164+ヒール7=171で、だいたい計算が合う)、
横顔が目の前を通りすぎるのがわかっただけ。
 今日の練り歩きインタビューは夫婦2組をはじめカップルが多く
大漁。最後の方で、顔を覚えているらしいカップルに「その後どう
なのよ、親の承諾は降りた?」ごにょごにょ、女の子の方の言って
いることがよく聞き取れなかったが、女の子の方は結婚したいと思
っているらしいが、「彼は?」と聞かれた男の方が受けねらいのつ
もりか「有美さんとなら」と言って「ばかやろー。」

16. 信じるものに救われる

 この曲のピアノによる前奏に入る前に、前の曲の終わりでお辞儀
までしてしまうものだから、やはり流れは切れてると思う。メロデ
ィーが同じだからつながってるとする見方もできるけれど、少なく
ともシームレスにはなってない。まあいいけど。

(MC)
 ここもよく覚えていません。恒例の、「Not For Sale」を歌った
頃は寂しかったんだなあという話だったかな。
 泣きが入って次の曲へ。

17. あなたに出逢えて

 岩見さん、中村さん、井上さん、田中さん、青柳さん、藤稜さん
の順にメンバー紹介し、みんなで前に出てきて、手をつなぐ。マイ
クなし(手をつないで両手がふさがってるせい)で「どうもありがと
う」と挨拶。バンドメンバーが谷村を残して袖へ消える。
 残った谷村は会場内各方面へ一通り愛想を振りまいてから袖へ。

(幕間)

(MC)
 告知。ネタを決めきれていないらしく、あと何かあったっけ、を
連発。

E1. ずっと忘れない (弾き語り)

 エヘン虫のせいで数小説歌って中断し、歌い直し。

(MC)
 告知の続き。
 最後に、マイクなしの生声で「どうもありがとう。また来年もお
会いしましょうね。バイバイ。」

以上、18曲

●終演

 今日の公演は、谷村の声がちょっとハスキー気味だったのを除け
ば、質の低い野次が全くなく、素晴らしいものであった。3本締め
はあったが、まあいい。殊に、最前列の座席で谷村を間近に見られ
たことが、おそらく今後もチケット取得をMPに頼る限りほとんどな
いであろうことが予想されるから、これまでになく印象深いコンサ
ートとして記憶に残るだろう。
 しかし、私は自分のことで精いっぱいなせいか、皆さんのおっし
ゃる「温かい」「ハートフルな」といった形容が実感として沸いて
こない。もちろん、「もっとおそばに」とかは温かさを見せている
のだろうけど、それだけじゃないはずで、例えば曲順の組立なんか
にもそのような形容の当てはまる部分があるはずだ。それを感じ取
ることができない鈍感な自分が少し悲しい。

●オフミ

 須田さん、北瀬さんとともにロビーでのんびり(ってほどゆっく
りじゃないんですが)アンケートを記入していたら、どうやらMLの
みんなに置いていかれたらしく、外へ出てもMLの集団が見当たらな
い。ホール前の広場まで戻ったり駅まで行ってみたりしても見つか
らなくて往生した。その後、めぼしい飲み屋を当たることにしたら、
駅前の飲み屋ばかり集まったビルに入って2軒目でめでたくMLの集
団を発見、合流。
 須田さんは終電がそろそろなため自己紹介だけして帰った。私と
北瀬さんは場に入れてもらい、私はコンサートの内容を反芻しなが
ら飲んだ。なぜだかわからないが、隣にいた石川さんが心なしか冷
たかった。
 山本さんより、いつも冷静な三浦と再三指摘されているが、一方、
深沢さんに、最前列で踊っている三浦が印象的だったとも指摘され
た。確かに私は意識が飛ぶことはまずなく、かつ、飛ばないように
意識してブレーキをかけているところがある。アーチストに恋しち
ゃってることが自分でわかっていると、例えば目線がこっちへ来た
とかいった程度でもいい方へいい方へ解釈して「俺の有美」状態に
陥って周りが見えなくなるのが怖いから、意識して抑えているよう
なところはある。でも、そうした箍の中でも、体を揺する(私がコ
ンサートで踊るようになったのは何を隠そうついこないだ日清パワ
ーステーションで行われたSingLikeTalkingのライブからのことで、
体質としてちゃんと踊れるわけではないもんで、谷村に見とれてい
るといつのまにかテンポが狂っていたりします)程度には没入して
楽しんでいるのですよ。たまたまクールな部分が残っていていろい
ろと観察しているだけで、ね。
 私はオフミ2次会となるfeelmieコピーバンドによる生演奏付オー
ルナイトカラオケ大会には出席せず、間近に見た生谷村を反芻しな
がら帰宅。

●次回は……

 次はちょっと間があいて、日本武道館の両日です。今日のような
強烈な生谷村を見てしまうと、それまでの間にたまる欲求不満が何
をもたらすか若干不安……。

以上

1995/11/24 28:31


●後日談

 実は、本ドキュメントはMLに流して以降幾つかの訂正を経ていま
す。細かいところではタイプミスなんかがありましたが、もっと大
きなところで、このコンサートの後、「あなたに出逢えて」は弾き
語りではなく、かつ、バンドメンバー紹介→バンドメンバーが袖へ
引っ込んだのはそのあとだったという指摘を受けました。ここいら
辺の記憶は非常に曖昧で、確かバンドメンバーが引っ込んでから谷
村が何かやったような気がするんですが、どうも錯覚だったようで
す。さらに、「あなたに出逢えて」と「Not For Saleを歌った頃は
寂しかった」MCの順序も自信ありません。なにしろ、間近に見る生
谷村は短期記憶を吹き飛ばしてくれるくらい強烈だったのです。
 この辺りの記憶のはっきりしている方、何がどうなっていたのか
教えて下さい。


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last update: $Date: 2007/11/24 06:45:53 $


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