1996/12/06 谷村有美 グリーンホール相模大野・大ホール
YUMI TANIMURA CONCERT TOUR 1996〜1997 LIVE LIVE LIVE 〜しあわせのかたち〜
1階13列41番
三浦敏孝, 早稲田大学
miura@muraoka.info.waseda.ac.jp

●開演前

鶴ヶ峰の旭警察署で運転免許証の更新手続きを済ませて、相模大野
に着いたのは午後4時。ちょっと早すぎるので、ステーションスク
エアという駅ビルの中で時間をつぶすことに。

5階の山野楽器(レコード屋)でなんと驚いたことにシングライクトー
キングが大きく扱われ場所を占めていたので、思わずSalt and
Sugar(佐藤竹善と塩谷哲のユニット)のライブアルバム「Concerts」
と、Plus One(佐藤竹善と小田一正のユニット)のシングル「クリス
マスが過ぎても」を衝動買い。

その後、同じフロアの喫茶店でレモンのパウンドケーキとポム・アー
ルグレイというブレンドの紅茶を頂きながらパソコンを広げて
Delphiで遊びながら2時間をつぶす。

6:10に店を出て、いざ、グリーンホールへ。

あらかじめ座席がわかっているのは日立の岸さんと電通大の熊谷さ
んだけである。自分の座席に荷物を置いて、この二人に挨拶し、終
演後の待ち合わせ場所を打ち合わせる。

●座席

13列目は前の方の座席がほぼ平らに並んでいるブロックと後ろの斜
めに並んでいるブロックの区切りの通路のすぐ後ろで、視界が極め
てクリアーな、見やすい席である。ステージ上の人もそこそこちゃ
んと人間の大きさに見える。表情もまあ裸眼視力両目2.0をもって
すればそれほど苦労しなくてもわかる。去年の1列目!などとは比べ
るべくもないが、しかし全体としてはよい席である。

●開演 - 18:36

Live Live Liveということでジャズのライブハウスらしさを醸し出
すためか、木組みの梁のようなものがステージ上空に釣り下げられ
ている。また、ステージ奥には木組みの枠に上半分漆喰塗りのよう
に見えるように仕上げられた太い柱(上にはスポットライトとその
操作用のスペースがしつらえられている)が2本。

ステージ上部両脇のライトが客席を刺すように照らして客の目を幻
惑させてから客電を落とす。ちょっと手が込んでいる、味なマネを
するなと感心させるオープニング。

カズのピアノソロで始まり、16小節だかごとに一人一人、ドラム、
ベース、サックス、ギター、シンセと順に参加する。カズをフィー
チャーするとこういうオープニングになるのかと感心。これまでの
公演のレポートで言われていたほどばらばらな感じはしない。

そして谷村登場。髪はアップにまとめ、黒いロングパンツにチョコ
レート色のエナメルの腰までのコート。

いい展開だ。これまでの公演のレポートによれば前半は素晴らしい
らしいので、期待して見守る。

1. はじめの一歩

今回のツアーのこれまでの公演のレポートは全部読んでいたのだけ
れど、曲順はそれを目にするまで思い出せない程度に忘れているた
め、「ああ、そういえばこういう展開になるのね」といちいち感心
させられる。

声質が変わっている。最近よく出てくる女性ボーカリストにありが
ちな、少しとがったというか、のどのところで共鳴する成分が強く
出ているような感じの、声優のような声になっている。この声で最
後まで通されるとちょっといやな感じ。

しかし、声量はのっけからちゃんと出ているし、何よりも、谷村が
苦しそうにではなく、楽に声を出しているように見える。

2. 優しいのにも程がある

この曲に限って歌詞間違いが結構ある。2曲目でこれだけ間違えて
いるようだと今日一日引きずるんじゃなかろうかと不安になる。し
かし、歌詞すっ飛ばしはなかったためか、さすがにやり直しまでは
やらなかった。

3. 最後のKISS

気持ちよく肩を揺すっているところへお約束の腕振りが来ると、ど
うもしっくりこない。肩を揺するときの左右の向きと腕振りの左右
の向きが合ってないもんで、接続がうまくいかず妙な感じ。それ以
前に、腕振りのお約束のことなどすっかり忘れていたから、みんな
が腕振りを始めたのに一瞬どうしていいかわからなくなってる自分
がいた。

4. 空からの贈り物

この辺で、チョコレート色のエナメルのコートを脱いで、白の長袖
のぴったりしたのになっている。

日比谷野音「夏の御中元」初日以来のこの曲。高音部がうれしい。

5. 恋に落ちた(弾き語り)

ピアノの前に移動して一呼吸。これでMCに入るのかと思いきや、歌
い始める。ここで意表を突いてくれたので、脊髄ショックとまでは
行かないまでも、ある程度のショックをもって聞かせてくれた。

この辺でようやく声質が私の知っている谷村の声に戻ってくれた。
そして、クリスタルボイスのパワー全開なんだけど、苦労して絞り
出している感じが全くなく、楽に声を出しながら全開のパワーで美
しい声を堪能させてくれる。幸せ。

ピアノとの対話は去年ひとしきりやったため今年は余裕があるとい
うことなのか、客の方へ半身になって顔を客の方へ向けて歌う。

ここまで、息もつかせず一気にやりきった感じ。飛ばしている。い
いぞ。

(MC)

暗転。ごそごそとしばし動いたあと、アコギを抱えてステージ中央
手前の椅子へ。そして挨拶。

で、「あ、がーん。上着脱ぐの忘れた。」といってまたギターをど
け、ピアノの脇で上着(白の長袖)を脱ぐ。そこへカズがピアノで
「ちょっとだけよ」のテーマを1フレーズ。これで受けを取り、谷
村、腰を振りながら脱ぐ。脱ぐと黒のノースリーブになっている。

気を取り直して、挨拶。そしてメンバー紹介。キーボード加藤かず
ひろ、ギター岩見一彦、ドラム山下さとる、ベース渡辺しげる、キー
ボード中村やすなり、サックス藤稜まさひろ。

会場から「ボーカルは?」あのなあ。遠くの席になったから何とか
して出演者を独り占めしたいという幼稚な思考回路を持った輩のや
ることが非常に癇に障る。

「ボーカルじゃないのよ、ほら、これ(ギター)が目に入らない?」
お約束か、「こんばんは、花時計です。♪花時計〜は〜」でまた客
席から「全労災」……また興が削がれる。

「練習してきた」と言って「ゲゲゲの鬼太郎」をなってないチョー
キングを交えながら弾く。

MCになると我も我もとばかり入ってくる会場からの声。せっかく割
合ちゃんとした内容のコンサートなのにこういうののおかげで興が
削がれてしまう。本当にああいうのはつまみ出してほしい。そんな
わけで、音のしない時間が少し続くとまた無粋な野次が入ってくる
心配をしてはらはらするのだ。せっかくいい出来のコンサートなの
に。

話題の順番はあまり定かではないが、アルバムのないツアーである
事に触れる。曰く、「アルバムなきツアーは今回が初めてじゃあり
ません」

6. 一番大好きだった(ギター弾き語り)

ボーカルが慣れないギターを持つというのは数日前に見たLove
Connectionでちょっと嫌だなと思っていたのだが、谷村の場合はそ
れほど嫌な感じがしない。

以前に写真集「Obrigada」で「イパネマの娘」をマスターしたとか
いった記述を目にしていて、谷村がギターも弾くようになったこと
を知っていたから、完全な俄造りというわけではないことがわかっ
ていたのでそういう贔屓目になるのかもしれない。

が、まあその辺の理屈はどうでもいい。谷村のギター弾き語りも悪
くはない。俄仕込みといえどそれなりに演奏がちゃんとしていて存
在感があり、かつ、コンサート全体の出来が今回くらいちゃんとし
ていれば、趣向の一つとして余裕をもって受け入れられるのだ。

終わると暗転し、バンドメンバーのほとんどが引っ込み、カズがピ
アノへ。

7. 一緒に暮らそう

ほぼ完璧にジャズにアレンジされた伴奏がよくはまっている。曲の
最後の、カズのピアノと谷村のスキャットとのかけあいがまたいい。

ここで、谷村が引っ込んでカズのピアノと藤稜さんのサックスのセッ
ションの間に谷村が衣装換えをして花柄のノースリーブに緑の光沢
のある(シルクかな?)ロングパンツで出てきたんじゃなかったっけ。

(MC)

ピアノの紹介。去年同様、ピアノリサーチ表を読み上げる。スタイ
ンウェイのD274型。以前このピアノを弾いた著名人ということで去
年よりだいぶ増えているので覚えきれなかった。中で中村紘子があっ
たのでネスカフェのCMで弾いていたやつをやるが、ここでまた左後
ろから「定番」の声が入って興が冷める。谷村「そういうの聞こえ
ないんだ」

次の曲に入る前に、会場中央辺りで携帯電話の着信音。谷村「誰? 
やあねえもう、帰ろうか。」うれしい突っ込みである。それから、
世間に携帯電話がだいぶ普及してきたという振りから新幹線で2時
間話しっぱなしだった関西人の中小企業の社長らしいオヤジの話、
谷村母が携帯電話を買ったと嬉しそうに見せに来たので、たまたま
急ぎで連絡を取りたくなったときに自宅から母の携帯へかけてみた
ら留守電だったので伝言を入れ、さあ出かけるかと洗面所に行った
らそこに母の携帯が転がっていてたった今自分の入れた伝言の着信
が表示されていて、あきれて「不携帯電話発見!」とメモを貼り付
けた話へつなぐ。しっかり自分のネタに持ち込める辺り、今回のツ
アー*後半*における谷村の余裕を感じる。

8. 生まれ変わる気持ち(弾き語り)

この曲をライブで聴くのは初めてじゃなかろうか。これまた初期の
曲で多用されていた高音部の使い方がうれしい。幸せ。

ステージ上のスモークがやや濃くなり、谷村とカズのピアノ・キー
ボード群を囲んでバンドを乗せている山台の階段部分の上面が実は
網になっていて、その下から真上へライトが照らし、光のカーテン
を作る。

9. それでもあなたを愛してる(弾き語り)

アレンジは去年とほとんど変わらないけれど、悪くはない。

10. Instrumental part I

今年のインストは前の曲の余韻を引きずりつつ第2主題から始まる。
去年よりリズムパートが強く出たややヘヴィな、しかし、しっかり
Jazzyなアレンジ。

単なるアレンジ違いではない。同じ主題を使っているというだけで、
曲全体の構成がだいぶ変わっている。ほとんど第2楽章という感じ。
しかもかっこいい。幸せ。

11. Oh, my god!!

谷村のピアノソロはない。よし。

しかも、しっかり以前のとはアレンジが変わっている。

今回のコンサートでは去年までとはほとんど全部の曲でアレンジが
変わっている辺りに、バンドメンバー変更の影響を感じる。

ジャズに電子楽器というのは、まかり間違うと耳障りなだけに落ち
てしまう、ある意味危険な取り合わせなんじゃないかと思うのだが、
この時期になると変更の影響がだいぶ熟成されてきて、古い曲のア
レンジ違いでも、よくはまった、曲そのものの古さを感じさせない
というか朽ちた感じの全くしない新鮮さをもって迎えられる。嬉し
い。

12. 好きこそ物の上手なれ

これもアレンジが変わっているため、お約束の入る余地のないのが
却って気持ちよく体を揺すって没入させてくれる要素をなしている。
去年までの「コーナー」のためにいささか食傷していた曲だが、こ
のおかげで気持ちよく聞き切れる。

13. しあわせのかたち

アレンジがCDに近いのがやや残念だが、しかし嫌な感じはしない。

最後(厳密には違うが)に、「今日は12月6日?」で6日に因んで6回、
ジャン、ジャン、ジャン、ジャン、ジャン、ジャン(こういうのな
んて謂うんだろう)。

ステージの上から、最前列の女性客にインタビュー。カップルで千
葉から来ていて、来年3月に結婚する。で、彼女の年齢の24に因ん
で、24回、ジャン、ジャン、……「幸せになってねー!」で最後の
部分を演奏。

こういうちょっと意味不明な趣向、要らないなあ。

14. 愛する勇気

パンツと同じ色、同じ素材の緑のジャケットを羽織る。

谷村の求めに応じて客席の合唱。谷村「すごい、すごーい」私はあ
まりこの曲の歌詞を覚えていないので控えめに歌う。

2コーラス目でバンドがほとんど演奏をやめ、客の合唱とときどき
谷村のリードするボーカルだけになる。

終わって、泣く谷村。

15. 信じるものに救われる

去年までとちょっと味付けが違う。音楽的な知識がないためはっき
りここが違うと切り分けられないのだが、結構違って聞こえる。

16. 午前0時のオアシス

前奏にかぶせて本編最後の挨拶。

終わると、バンドを大きな拍手で送り出し、谷村もひとしきり愛想
を振りまいて袖へ。

後半も、一気にやり切った感じ。MCになると客からの野次があるか
ら、野次除けの意味でもあまりMCを挿入せずに飛ばしたまま最後ま
で行ってしまうのは悪くないのだが、関東では谷村のラジオ番組が
聞けない現状では、コンサートでも谷村のMCが聞ける時間が短くなっ
てしまった点が少しだけ残念。

但し、息もつかせぬまま最後までやりきったこと自体は、心地よい。

(以下、アンコール)

客電も点かないし、明らかに予定調和なんだけど、自然にアンコー
ルの呼び出し拍手に参加している自分に気づく。叩く掌が汗でべっ
とりしている。

白地にプリントのTシャツにモノトーンの柄物のパンツで谷村登場。

告知。横浜アリーナのクリスマスショーでステージプランが固まっ
たためアリーナ席の増設ができることになった。ツアーファイナル
の日本武道館公演が決まった。いずれも会場の出口で予約を受け付
けている。と、全部紙のメモを読む。

E1. あなたに出逢えて(弾き語り)

最後に、マイクなしの生声で「どうもありがとうございました。ま
たね。」

以上、17曲

●終演 - 20:40ぐらいか

ステージは、ほぼ満足である。八王子以前の公演に行った皆様、ご
愁傷様。悪いが私は満足した。相模大野は「当たり」だった。

気がついたら、歌詞間違いは2曲目以外は気づかなかったし、ピア
ノのミスタッチも全く検出できなかった。バンドもしっかりまとまっ
ている。非常によい出来である。

三本締めの音頭があのやかましかった野次の出た辺りから聞こえて
くる。参加する気になれない三本締めである。最後がソロのピアノ
弾き語りに生声挨拶があって、その後に三本締めもないもんだ。似
つかわしくない。

アンケートに「何だ、ちゃんとしてたじゃん」と「やかましいのつ
まみ出してよ」と記入。

心地よい疲労を抱えて会場の外へ出ると、真っ先に上智大の加藤さ
んが声をかけてきた。オフ出席の表明は見なかったような気がする
のであれっと思ったけど、オフミに出てくれる分にはいろいろ深い
話も聞けるので嬉しいものである。加山さんも来ていたとかちらっ
と行っていたが、その場にはいない。

開演前に顔を合わせた岸さんと熊谷さんの顔をこの時点でほとんど
忘れていたが、まあ幹事もいて10人もの塊ができていたからそれに
くっついていけばよかろう。

会場出口の広場で生ギター二人を従えた女の子が谷村の曲を歌って
いる。ボーカルもギターもしばしば音を外すので聞いていてもどか
しいのだが、そのまま聞きながらしばしうだうだしながら出席を確
認し、駅前の飲み屋へ移動。加藤さんは用事があって後ほど合流す
るとのことで、分離。

●オフミ

10人で駅前の「和民」へ入る。席が空くのをしばらく待って、一つ
の区画に10人全部押し込める。狭い。

参加者は、電通大の熊谷さん、農工大の宮川さん、桜美林大の尾崎
さん、東海大・横浜のひねQさん、早稲田大学の三浦、黒川@MSさん、
日立ソフトの遠田さん、日立の岸さん、中央大の宣行さん、日立の
斎藤さん(以上、座席順時計回り)。

みんな口々に「今日はよかった」という。自分だけではなかったの
だ。私を含め今回のツアー初参加の人にも、八王子までの惨状を見
ている人にも、どっちにも、今日の公演は好評である。あとから合
流した上智大の加藤さんに至っては、「もう今回のツアーは今日を
最後にしていい、横浜アリーナも武道館も見なくていい」とまで言
い切る。

今日辺りMLに流れていた、八王子でのカルトQ本選問題が酒の肴に
登る。ずいぶん極悪な問題が出たものである。これを勝ち抜いた千
晶ちゃんはすごい。

岸さんが口を滑らせて横浜アリーナとかなけんのオフミの言い出しっ
ぺ幹事に。ひねQさんはその子分に。

私が桐蔭学園高校22期の卒業生であることが遠田さんにばれていた
りした。ついでに、遠田さんと私の自宅が近いことが判明し、帰り
に遠田さんの車に便乗させてもらえることに。ありがたいことであ
る。

参加者みんな満足というところで一致した今日のオフミ。時間が遅
くなって終電が危なくなったころにお開き。

ということで、皆様、次の横浜アリーナ「The Christmas Show」で
お会いしましょう。サンタ帽子をお忘れなく!

以上

1996/12/06 27:59


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