マイク・オールドフィールド アルバムレビュー

マイク・オールドフィールドのデビューから現在に至るまでの公式アルバムをご紹介します。
なお、各アルバムごとにジャケット写真を掲示しております。著作権者の承認をとりたくいろいろ調べましたが、不明のまま掲示しております。もし問題等がありましたらご連絡ください。速やかに対処いたしますが、このホームページは単純にマイク・オールドフィールドを賞賛し、日本におけるファンを増やしたいと思うゆえの掲示です。著作権者の方の暖かい配慮を期待しております。またこの件に関するアドバイスも歓迎いたします。

Tubular Bells (1973)

オールドフィールドのデビュー曲であり、ヴァージンレコードの第一号であることは有名。そしてあの映画エクソシストでその導入部が使われたため、全世界でメガヒットとなった。しかしながらエクソシストで使われたこともあり、そのすばらしい導入部は恐怖、謎などのイメージがついてしまい、マイク自身、そして我々ファンにとっても、非常に心外なことになってしまっている。 その導入部はその循環メロディのために聞く者に対して少々不安な気持ちを呼び起こす。ところがやがて長いトンネルを抜けた後に大草原に出会ったようなすばらしい広がりを見せる。そしてどんどんこの曲の世界に引き込まれていくのである。パート1の最終では単純なメロディの循環にいろいろな楽器が重なっていき、音がどんどん厚くなっていくのは圧巻。自分はパート2の導入部からその次のギターソロまでの流れが特に気に入っている。その牧歌的な印象はどんなにストレスを感じているときも、心を安らげてくれる。最後はまるで子供のためのフォークダンスのような曲で終わる。 (ジャケットにはクレジットされていないがSailor's Hornpipeと一般に呼ばれている。この部分にはロング・ヴァージョンがある。 (BOXEDに収録) この曲は四半世紀前に発表されたものでありながら、現在に至るまでその色をあせることなく、我々のような熱烈なファンは数限りなく聞き込んでいるにもかかわらず、あきられることなく、今でも新鮮な輝きを持って聞くことができる。とても不思議な曲。バッハやベートーベンのようなクラッシックの名曲が今でも色あせることの無いのと同じようなレベルの高さがあるからこそだ。ジャケットデザインも今ではオールドフィールドそのもののロゴマークになっているが、当初はそんなこと意識などしていなかったはず。オールドフィールドを初めとするスタッフの欲のない感性があったからこそ、こんな素晴らしい作品が世に出たのだろう。現在のよくあるヒットねらいの使い捨てミュージックとは本質的にレベルが違う。チューブラーベルズの導入部はその後多くの人に真似されたが、どれもチューブラーベルズの足下にも及ばない。


Hergest Ridge (1974)

衝撃的なデビューの1年後に発表されたこのアルバムは少々地味な評価を与えられている。しかしその品質は高く、チューブラーベルズのような印象的な導入部が無いだけで、最後に至るまで緻密な計算によって構成された曲の展開は見事。導入部の牧歌的風景を想像させる流れから後半におけるエレクトリック・サンダーストームとある評論家がいったハードなフレーズに至るまで、聞き込むほど味わいがでてくる作品となっている。僕は特にPart2の導入部のアコーステックの部分がとても好きだ。ハージェスト・リッジでの犬と模型飛行機のジャケットのイメージ通りの作品とも言えるだろう。ハージェスト・リッジとは彼がこの頃住んでいた近くに実在する山のこと。(ウエールズ州とヘアフォードショア州の境界にあるらしい。)現在はCDでしか入手できないが、注意しなければならないのは、CDのミックスはすべてBOXEDに収録された際のヴァージョンで、オリジナルのLPのミックスではない。LP盤でも二通りの盤があるらしい。特別版の要素が強いBOXEDのミックスがCDで通常に使用されているのは不思議。間違いなくオリジナ ルのLPミックスの方が優れており、CDでは一つ一つの楽器やコーラスの音が小さくきれいにまとまってはいるものの、迫力に大きく欠ける。その違いは導入部の鉄琴の音からすぐに違いがわかる。ただでさえ地味な印象を与えているこの作品をCDミックスはさらに地味にしてしまっている。最近になるまでCDの音しか知らず、やっと中古店でLP盤を入手して聞いたときは衝撃だった。また、チューブラーベルズと同様にクラシカルにアレンジされて、ライブで演奏されている。当初は正規盤として発売される予定だったが、なぜか中止になってしまった。その曲を全部聴く機会に恵まれたが、僕はチューブラーベルズのクラシカルより好きだ。


Ommadawn (1975)

マイク・オールドフィールド初期の中では一番気に入っている作品。絶対傑作。やはり一度聞いたら忘れられないフレーズから始まり、サリー・オールドフィールドの絶妙なコーラスが織り込まれていく。 チーフタンズのパディ・モロネイがゲストで起用され、そのバグパイプの調べはまさに絶品。最初から最後まで牧歌的フレーズの固まりで、初期のマイク・オールドフィールドらしさがもっとも良くでていると思う。 特に一度楽曲が終了したあとに挿入されているOn Horsebackと一般に呼ばれる楽曲は、何ともいえない雰囲気をかもしだし、聞く者の心を和ませてくれる。この曲だけでも最高傑作のひとつ。自分ではもっともよくかけるCDのひとつ。その歌詞の中にもHergest Ridgeがでてきている。(日本語訳詩あり)またオマドーンという言葉はゲール語(ケルトの言葉)でばか、まぬけという意味になるらしい。アフリカンドラムに合わせたコーラスはゲール語で「父はベットで寝ている。猫はミルクを飲んでいる。僕はまぬけで笑っている。」と歌っているらしい。
Tubular BellsからOmmadawnまでの3作は初期三部作と呼ばれ、今でも燦然と輝く質を保っている。特にこの作品は、ファンの間でも人気が高く、いろいろ評価の別れることの多いオールドフィールドの作品の中では、一番人気。
僕自身もこの作品はもっとも良く聞く方だ。その理由は、やっぱり単純素朴な欲のなさ、人間の心の底に響く感動があるからだ。もしオールドフィールドが初期三部作だけしか発表していなかったとしても、僕はきっとこの3つの作品を大切にしていたことだろう。オールドフィールドは日本人にはあまり知られていないが、それは日本人に受けないのではなく、本当は日本人の感性にとてもマッチしていると思う。その理由はうまく説明できないが、アイルランドと同様のケルトの歴史と日本人の太古からの歴史、ストーンヘンジと古墳との類似のような、そんな近親間を感じてしまう。もしめざといプロデューサーあたりがこの曲を映画音楽やCMで効果的に使用したら、日本でも大ブレイクするような気がしてならない。


Incantations (1978)

発売当時はLP2枚組として発売された大作。初期のオールドフィールドの集大成として高い評価を与えられている。特にPART2の終わりの部分のMaddy Priorのボーカルによるロングフェローの詩「Hiawatha's Departure」の語りかけるようなメロディラインは中世の時代へさまよいこんだような雰囲気がある。このメロディラインはPart4のエンディングにも現れるが歌詞は全く違い「Ode to Cynthia」と呼ばれる。(日本語訳詩あり)4つのパートは雰囲気が微妙に違いながら、それでも各パートパート毎に他のパートへの伏線がしかけられており、まるで豪華なタペストリーを見ているかのようだ。まさにシンフォニックロックの初期の集大成。なおCD発売当初はこれをCD1枚におさめるため、なんとPart3の最初の3分強がカットされていた。(とても重要な部分でありまったくけしからんことです。)現在発売されているものは改善されており問題ないが、お手元のCDのPart3の時間が13:49となっていたら、それはカットされているCDです。
マイク・オールドフィールドは初期3部作発表後、有名になった反動が一因で、極端に厭世的になり、精神的も相当参っていたらしい。その後、あるセラピーを受けて、回復期調にある時の作品に当たる。そういう背景を考えれば、初期三部作と大きく曲調がかわるプラチナムとの間に入る移行期的な作品でもある。彼のその時の感性をありったけ曲につぎ込んだような気もしてしまう。


Exposed (1979)

 Incantations / Tubular Bells / Guilty

初めてのライブ2枚組LPとして発表された。CDも2枚組になっている。Tubular Bells, Incantations, Guiltyが収録されており、その当時積極的に行っていたライブツアーの時のもの。ライブ盤ということもあってチューブラーベルズもインカンテーションズもかなりロック色が強くなっており、曲調はオリジナルとかなり違う。 特にチューブラーベルズは完全にロック調にアレンジされている。それはそれでとてもおもしろく聞ける。特に聞き応えがあるのはチューブラーベルズPART2のオリジナルでは原始人の咆吼に相当する部分がとてもリズミカルで聞き易いメロディにアレンジされている部分だ。ここだけ聞いていると、原曲を聞き込んだ人しか、チューブラーベルズだとは気がつかないかもしれない。しかしながらどうしてもオリジナルと比べるとカットされているパートも多く、物足りないと感じてしまう部分もある。やっぱりマニア向けの作品かもしれない。ただ、オリジナルとの対比が楽しめて、全体的に明るい曲調であり、マニアにとっては貴重な音源。演奏も安定しており、レベルの高いライブ盤だと言っていいだろう。


Platinum (1979)

Platinum ( 1 Airborn 2 Platinum 3 Charleston 4 North Star ・Platinum Finale ) / Woodhenge / Into Wonderland / Punkaddidle / I Got Rhythm

この作品から今までの作風から大きく変わるオールドフィールドのターニングポイント的な作品。今までのシンフォニック調から一気にロック、ポップス調に変わるため、デビュー以来のファンにとっては衝撃だったかもしれない。そのせいかあまり高い評価を与えられていないようだが、個人的にはとても好きな一枚。 たとえロック系になっても、オールドフィールドのソングライティング、アレンジメントの能力はけして変わりなく、そのギターテクニックは冴え渡っている。特に出だしのベースギターのラインは圧巻だと思う。LPでいうA面は4つのパートに分かれるフュージョン系の作風。 B面は2曲の歌ものをはさんで4曲構成となっている。どの曲をとっても名曲で、各曲が相互に関係しており、全体で一つの楽曲と考えることもできる。CDには実際にはInto Wonderlandである曲をSallyとクレジットしていることに注意してください。自分も当初はInto WonderlandをSallyという曲と思い、なぜ歌詞に一言もサリーとでてこないのか不思議には思っていた。これはLP発売当時は確かにSallyという曲が入っていたのだが、発売直後ヴァージン社長のリチャード・ブランソンがなぜかこの曲を好まず、セカンドプレス以降Into Wonderlandに差し替えられ、なおかつヴァージンの怠慢で曲名の印刷を現在に至るまで変更していないことが理由だとわかった。(日本語訳詞あり)たまたまSallyの入った海賊盤を手に入れることができ、初めて聞いたときは衝撃だった。Sallyは実にオールドフィールドらしい佳曲であり、Sallyが最大に盛り上がった時点でそのままノンストップでPunkaddidleになだれ込んでゆくこと。A面のPlatinumの中にも、Punkaddidleの中にもSallyのメロディが現れること。 つまりこのアルバムの中ではキーになる曲であることがよくわかった。そしてInto WonderlandはSallyを編曲しなおし、歌詞を変えた曲であることもわかった。Sally1曲を聞くことができたおかげで、実はこのアルバムはA面からB面に至るまで計算されたメドレー調のアルバムだったことがよくわかった。Into Wonderlandもいい曲だが、Sallyがカットされていない方がずっとすばらしいアルバムであったのにブランソンはとんでもないことをしたものだと思う。後にSallyバージョンのプラチナム全曲を聞く機会に恵まれたが、やはり通しで聞いても、アルバム構成的にそちらの方が優れていることを再認識できた。ちなみにSallyは現在海賊盤、あるいは1979年当時のファーストプレスを手に入れるしか入手することはできない。ちなみに、サリーというタイトルはその当時の恋人であったサリーのことで、姉のサリーのことではない。またI Got Rhytmにもアルバムに収録されなかった別ヴァージョンがあり、かなり大げさにアレンジされている。(Impressions収録)これも現在ではとっても入手困難。僕は別ヴァージョンのアレンジの方が好きだ。最後に鐘の音が響くのだが、それだけで心が震えてしまう。


Q.E.2 (1980)

Taurus 1 / Sheba / Conflict / Arrival / Wonderful Land / Mirage / QE2 / Celt / Molly

初めて比較的短い曲ばかりを集めたインストルメンタルアルバム。比較的ポップな曲が多く、(アバのアライバルをコピーしている、ワンダフルランドはシャドウズのコピー。)とても聞き易い。しかしながらオールドフィールドの特徴であるコンセプト的な構成ではなく、1曲1曲が完全に独立している感じがしてしまう。自分としてはやや物足りない作品。初期3部作にはまっていたファンにとっては、プラチナムで裏切られ、この作品でとどめを刺されたかもしれない。しかしながら1曲目のTaurus 1はこの後のアルバムで2,3と続く3部作の1作目であり、この後の2と絡めて聞くととても引き込まれてしまう。ロックテンポでありながら聴く者に初期3部作の延長線である牧歌的風景、あるいは星空を想像させる曲調はけして初期のイメージと変わることはない。またこのアルバムではこの後しばらくの間、オールドフィールドの曲を見事に色づけしてくれるMaggie Riley (マギー・ライリー)が登場する。彼女の歌声無くしてこの時期のオールドフィールドの作品は語れないほど、見事な歌声と歌唱力で我々を楽しませてくれる歌手である。ただまだこのアルバムではコーラスしか担当していない。またこのアルバムではフィル・コリンズもゲストでドラマーとして参加している。Mollyは彼の娘の名前。(サリーとの間にできた娘)


Five Miles Out (1982)

Taurus U / Family Man / Orabidoo / Mout Teidi / Five Miles Out

1980年代マイク・オールドフィールドの最高傑作と思う。構成、曲調としてはPlatinumの流れをくみ、A面を25分にも及ぶTaurus 2の1曲のみのとし、B面を歌ものと短めのインストルメンタルを織り交ぜている。Taurus 2は前作の続編としてさらに構成を豊かにした大作。ハードなギターから始まりオマドーンに続いて再登場したパディ・モロネイのバグパイプ、オルゴールのような調べ、そして中盤におけるマギー・ライリーの実に心和ませる歌声。(ライリーの歌の部分はThe Deep Deep Sound と呼ばれる) 25分があっという間に過ぎてしまう。この曲は我々にリズミカルな楽しさを与えて、かつ中世アイルランドの叙情的な風景の中に招待してくれるばかりではなく、涙がでてくるような感動を与えてくれる。音楽を聴いて涙がでるというのはこの曲については言い過ぎではない。後半ではマギー・ライリーのボーカルによるとてもポップなファミリー・マン。(ホール&オーツがカバーしてヒットさせたのは有名。でもオールドフィールドの方が全然いい。)遭難した登山家の物語とそれを悲しむ妻の歌、オラビドウー。(最後の部分のライリーの歌声はすばらしい)(日本語訳あり)とても美しいメロデイのマウント・テイディ。どれをとっても名曲ばかり。そして最後に再びTaurus2のイントロを使ったファイブ・マイルズ・アウト。 オールドフィールドが自ら歌い、墜落する寸前のパイロットを表現して聞く者に不安感を感じさせておきながら、ライリーの歌声をはさむことによって救わせるというちょっと考えられない構成が見事に成功している。ロック系が好きな人がオールドフィール ドを初めて聞くならおすすめのアルバム。(マウント・テイデイではパーカッションをあのカール・パーマーが担当している) このアルバムからIslandsまではポップ色が強いながらもとても味わい深いアルバムを提供してくれる。


Crises (1983)

Crises / Moonlight Shadow / In High Places / Foreign Affair / Taurus 3 / Shadow On The Wall

このアルバムもA面をCrises1曲のみとし、B面はインストをTaurus3だけであとはすべて歌ものとした構成。Crisesはさらにいっそうハードさを増し、この曲だけを聞くとちょっとオールドフィールドとは感じないかもしれないが、よく聞くとやはりオールドフィールド節であり、とても聞き応えのある作品。この曲調が後の傑作Amarokにつながっているような気がする。ムーンライト・シャドウは歌ものとしては一番ヒットした作品。(日本語訳詩あり)恋人を殺された悲しみを切々と歌うライリーの歌声とオールドフィールドのギターは本当にすばらしい。暗殺されたジョン・レノンのことを歌った曲だと噂されているようだが、マイクはインタビューで、レノンのことを歌詞にしたわけではないが、レノンが殺された夜ニューヨークにたまたまいて、その夜の雰囲気をよく覚えていて、それがヒントになったと語っている。おそらくオールドフィールドの曲でチューブラーベルズに次いでもっともコピーされた回数が多いのではないだろうか。僕の聴いたことがあるだけでも、ルネッサンス のアニー・ハズラム、シャドウズ、日本では嶺川貴子がある。でもどの人の曲もオリジナルには遠く及ばない。イン・ハイ・プレイシズではYesのジョン・アンダーソンがヴォーカルでゲスト参加。ムーンライト・シャドウとシャドウ・オン・ザ・ウォールにはロングバージョンがある。(ムーンライトシャドウのロングバージョンはとてもいい)またこのジャケットデザインはとても斬新的と思う。日本で発売された時は、アルバムタイトルを「ムーンライトシャドウ」とし、比較的宣伝した作品だろう。遊佐未森が自分の好きなアルバムの一つにあげている。また吉本ばななが同名のタイトルで小説を出しているが、マイクのこの曲がベースになっていることは意外と知られていないようだ。


Discovery (1984)

To France / Poison Arrows / Crystal Gazing / Tricks Of The Light / Discovery / Talk About Your Life / Saved By A Bell/ The Lake

マギー・ライリーのボーカルを全面に出し、バリー・パーマー(Barry Palmer)という男性ボーカリストを間に挟み、(この人の声もオールドフィールドの曲によく合う)歌もの中心のアルバムとしては最高の作品。歌ものとはいえボーカルとサイモン・フィリップス(Simon Phillips)のドラムス以外はすべてオールドフィールドが演奏し、1曲目から5曲目まで、(つまりA面)ほとんど切れ目のないメドレー形式になっている。マギー・ライリーの美しい歌声はオールドフィールドのメロディラインにまるで楽器の一つであるかのようにフィットし聴くものに何ともいえないやすらぎを与えてくれる。バリー・パーマーの声はロック調の曲であってもほどよく抑制され、この二人のデュエットであるトリックス・オブ・ザ・ライトはオールドフィールドの歌もののなかでも最高の作品のひとつとなっている。1曲目のトゥーフランスのイントロからぐっと引き込まれ、マギーライリーの歌声はどこまでも美しく、曲が終わってもそのままポイズン・アロウズに流れていくくだりは最高。B面に入るとまたトーク・アバウト・ユア・ライフでの語りかけるようなライリーの声と再び現れるトゥー・フランスの旋律に完全に魅了される。(日本語訳詩あり) セイブド・バイ・ア・ベル(日本語訳詩あり)でのパーマーの熱唱で一度アルバムは終了し、 最後にインストのレイクで締めくくる。このアルバムはオールドフィールドファンでなくても十分聞き応えのある作品で、自分にとっても愛着のあるものになっている。トゥー・フランスにはロングバージョン、 トリックス・オブ・ザ・ライトにはインストルメンタルバージョンがある。またマギー・ライリーは自分のアルバムでもトゥー・フランスを取り入れている。こちらのヴァージョンもなかなかのもの。 


The Killing Fields (1984)

オールドフィールドが初めて担当したサウンドトラック盤。(エクソシストはただチューブラーベルズのフレーズを使われただけ)映画はカンボジア内戦をテーマにした名作。 未だにカンボジア関係のニュースの際、この映画のクリップがよく使われ、オールドフィールドのこの曲が使われたりする。実際すばらしい映画だと思う。しかしながら曲の方はサウンドトラック盤ということをオールドフィールドが意識しすぎたのかどうか、効果音的なものが多く、あまりオールドフィールドらしくない。最後の「アルハンブラの思い出」をアレンジしたETUDEだけはオールドフィールドらしく納得のいくものだが、それ以外は特にコメントできるものはない。マイク・オールドフィールドのオリジナル盤としてはとらえにくい作品。もし、イギリスが映画大国で、アメリカ、フランスほどではなくとも、イギリスがもう少し映画に力を入れていたら、もっとオールドフィールドの曲が映画で使われていたことだろう。


Islands (1987)

The Wind Chimes Part1 Part2 / Islands / Flying Start / North Point / Magic Touch / The Time Has Come / When The Night On Fire

Discoveryから約3年開いていたため、ファンにとっては待望の新作だった。前半をインストの大曲、後半を歌ものとするパターンを継続し、コマーシャルヒットを明らかにねらった作品。アメリカ盤も発売され(左がイギリス盤、右がアメリカ盤のジャケット) ヴァージンレコードもかなり力を入れたようだ。これはビデオアルバムとしても発売された。セールスとしては期待ほどあがらなかったようだが、とても聞き易いいいアルバムになっていると思う。ウインドチャイムスは肩の力を抜いて安心して聞ける。リズミカルなところもなかなかよく心地よい。本当に「風鈴」のように心にさわやかな風がながれるような感じがする。歌ものは今回はマギー・ライリーが起用されていないのがDISCOVERYファンとしては少々寂しいが、この作品ではなんとボニー・タイラーがアイランズのボーカルを担当し、(絶対オールドフィールドの曲に合わないと思ったが、これがなかなかのもの)旧友のKevin Ayers (ケビン・エアーズ)がフライング・スタートの歌を歌っている。(ケアーズは自分のアルバムでもフライングスタートを歌っているが、オールドフィールド盤の方がいい)またこの時期オールドフィールドの愛人であったAnita Hegerland(アニタ・へジャーランド)がノースポイント、タイム・ハズ・カム、フェン・ザ・ナイツ・オン・ファイアの3曲を担当している。おもしろいのはマジックタッチのボーカルがイギリス盤ではJim Priceという人が歌っているのに対し、アメリカ盤ではGTRのMax Bacon(マックス・ベーコン)が担当していることだ。この二人歌い方、声がとても似ており、よく聴き比べないと違いがわからない。またアメリカ盤は歌ものの順番が違い、When The Night On Fireは収録されていない。(アイランズと同じメロディで歌詞とアレンジが違う。)すべての曲がとても聴きやすくアルバム全体を通してさわやかな感じがする。自分はフライングスタートののんびりした感じとノースポイント(日本語訳あり)の間奏におけるリードギターがとても気に入っている。ニュースステーションの特集ではタイム・ハズ・カムの一部がよく使われている。この曲はのちのエニグマのマイケル・クレトゥーが協力している。
この作品は製作段階で、バリーパーマーが歌っていたり、Islandsとwhen The Night On Fireをメドレーにした形のものが録音されている。将来もし、オールドフィールド未発表曲集なんてのが企画されたなら、ぜひ収録してほしいくらいのよい出来。


Earth Moving (1989)

Holy / Hostage / Far Country / Innocent / Runaway Son / See The Light / Earth Moving / Blue Night / Nothing But / Bridge To Paradise

驚いたことに全作歌ものばかりのアルバム。Islandsのアメリカ盤で登場したマックス・ベーコン、アニタ・へジャーランドなどいろいろな歌手を起用してバライティな構成になっている。うれしいのはマギー・ライリーが一曲だけとはいえブルーナイトで再起用されていることだ。 しかしながら同じ歌もの中心のDiscovery、Islandsと比較すると、このアルバムはあまりにポップすぎてオールドフィールドらしさが希薄になってしまいる作品。ただホーリー、ホステージ、ブルーナイト、イノセント等のおすすめの曲もたくさんあり、少々評論するには困難な作品。でも彼の作品だと思わずに聴けば、極上のポップアルバムだということは間違いない。HolyはシングルバージョンではなぜかOne Glance Is Holyというタイトルに変わっている。この作品を最後にオールドフィールドが歌手を起用する歌もの作品はTubular Bells Vまで途絶えることになる。


Amarok (1990) 

前作と打って変わり原点回帰ともいえるインストルメンタル1曲ものを発表。CDで曲数1曲でノンストップ60分05というのは衝撃的。発売前にはチューブラーベルズ2だとかオマドーン2であるとか噂されたが、発売されるとこれはオマドーン2といえることがわかった。Amarokという意味不明のタイトル、雨の窓越しの顔写真などの共通点、そして聞き込むと随所に共通点を見つけることができる。さて内容だがオールドフィールドファンにとって見事に評価が分かれている。最高傑作というファンもいれば、どうしようもない愚作というファンもいる。事実自分もこのCDを聴いたとき、スタートからのあまりのハードさに驚き、どうしてもオールドフィールドの作品とは思えず、数回聴いただけでしまっておくことになってしまった。この作品の良さに気がついたのはチューブラーベルズUでの感動のためもう一度この作品を聴いてみようと思ったことからで、購入後3年以上あとのことだった。あれほど耳障りだった導入部が実に心地よく聞こえ始め、いろいろな展開をする曲の構成、そのフレーズ、フレーズごとに顔を出すオールドフィールドならではの旋律、まさにこの作品は オールドフィールドの集大成的最高傑作だった。よくよく聞き込めばクライシズでのハードさに共通するものがあり、またオマドーンのあの牧歌的フレーズも盛りだくさん、最後の女性の台詞(日本語訳詩あり)のところも何ともいえず良くできている。いまではこの作品は自分にとってオールドフィールドそのものになってしまっている。1時間という長さを全く感じさせず、良質の映画を見た後のような感動が最後に残る。間違いなくプログレッシブロックの最高傑作だと僕は言いたい。もしファンのみなさまでこの作品を好きになれない方。もうすこし聞き込んでみてください。きっと新しい発見があるはずです。またオールドフィールドを初めて聴いてみようという方。取りあえず他の作品から入られた方が良いと思います。
最近このアナログ盤を手に入れることができた。内容はもちろん全く同じだが、アナログの音の性質のため、導入部の音はすこしまろやかに感じるし、全体的にアコーステックが強調されているような気になる。ちなみにA面とB面はCDのちょうど30:00のところで別れており、その前は早いフェイドアウト、後半はいきなりスタートしている。LPのラベルにはA面、B面の表示はなく片方にTheBeginingと書いてあるだけで、最後の女性のセリフがEndingのことを語っていることとうまく対比させている。このアルバムジャケットのオールドフィールドの顔が好きなファンは多いだろう。LPだともっとかっこいい。


 Heaven's Open (1991)

Make Make / No Dream / Mr.Shame / Gimme Back / Heaven's Open / Music From The Balcony

マイケル・オールドフィールドという名前で自らボーカルを担当した異色作。最初に聴いたときになぜ名前を変えたのか、なぜ自分が歌ったのか、そしてこのアルバムの雰囲気は今までのオールドフィールドとは異なり、怒りがこめられた印象があり、全くうけいれることができない作品だった。まだアマロックの良さに気がついていない頃でもあり、2作続けてのこの作品にオールドフィールドもついに違う道を歩み始めたのかとがっかりしてしまったことを覚えている。 実際前半の5曲はオールドフィールド自らが歌っているが、そのボーカルはオールドフィールドの素朴で実直な歌声のイメージなど無く、怒りをぶつけているような歌い方であり、後半のミュージックフロムバルコニーも一瞬期待させるものの、途中から怒りがたたきつけられるような展開を示す。唯一タイトル曲のHeaven's Openだけはその楽曲のよさのおかげで際立っている。アマロックは後にその良さがわかったがこの作品は全くの異色作、例外作となってしまっている。この作品が異色作で、名前も変えている理由は、オールドフィールドとヴァージン社長ブランソンとのトラブルにあった。ヴァージンとの契約の中でもう1作オリジナルアルバムを発表しなけらばならず、現在進行中のチューブラーベルズUをヴァージンから出したくなかった彼は、やっつけ仕事的にこの作品を作ってしまったのである。当然、作品の質が落ちることは認識したうえで、これは自分の本来のディスコグラフィーとは別のものとしたかったため、名前をマイケル・オールドフィールドとしたのである。われわれリスナーも例外的異色作としてとらえてもいい作品だと思う。事実この作品を最後にマイク・オールドフィールドは住み慣れたヴァージンレコードを去ることになる。


Tubular BellsU (1992) 

Sentinel / Dark Star / Clear Light / Blue Saloon / Sunjammer / Red Dawn / The Bell/ Weightless / The Great Plain / Sunset Door / Tattoo / Altered State / Maya Gold / Moonshine

ついにでたというオールドフィールドの会心の一作といえる作品。デビューアルバムのチューブラーベルズをベースに現在の音楽技術と彼の20年間の成長をもとに全く新たな作品を作り出した。われわれにチューブラーベルズの構成を思い出させながら、全くの新作を聴くという感動を与えてくれる。それはイントロにおけるピアノの音色から始まり最後のセイラーズ・ホーンパイプに相当するムーンシャインまで感動がとぎれることはない。この作品を最初のチューブラーベルズと比較してどちらが良い悪いと比較するものではない。全く違うものとしてとらえて評価すべき。各楽章ごとにタイトルはつけられているが、ノンストップの大作である。センティネルの旋律から引きずり込まれ、大きく視野が広がるような展開の後、ひときわ激しい旋律に変わったと思えばめくるめく音の波に流されていく。前半の最終のパートでの同じ旋律の繰り返しにいろいろな楽器が重ねられながら音が厚くなり、最後は実にかっこいいメロディで幕を閉じる。後半でのウエイトレス(無重力)からグレートプレーンにいたるピアノの旋律は感動もの。そしてタトゥーで のバグパイプ隊による大演奏はまさに感涙もの。このCDを買ってきてしばらくは完全に虜になり、毎日聴かないと落ち着かない中毒症状に陥ってしまった。この作品のおかげで今一度アマロックをよく聞き込んでみようと思い、先に述べたようないきさつになったしだい。この作品とアマロックは自分にとってとても大切な作品。この作品もよくニュースステーションでBGMに使われる。(The Bellの終わりの部分など) 絶対おすすめの一枚。


The Songs Of Distant Earth (1994)

In The Beginning / Let There Be Light / Supernova / Magellan / First Landing / Oceania / Only Time Will Tell / Prayer For The Earth / Lament For Atlantis / The Camber / Hibernaculum / Tubular World / The Shining Ones / Crystal Clear / The Sunken Forest / Ascension / A New Beginning

前作の感動は2年という期間ではさめることはなく、次回作はその余波さめやらぬうちに発表された。期待をはずれることはけして無く、この作品もじつに聞き応えのあるものになっている。アーサー・C・クラークの同名小説(日本語訳は遥かなる地球の歌。小説もなかなか味があっておもしろい。)を音楽化したもので曲のタイトルも小説の中にでてくるものを多く引用している。これも前作と同様に楽章ごとにタイトルがつけられているだけで、1時間近くのノンストップ作品である。イントロ部分を過ぎて始まるレット・ゼア・ビー・ライトの旋律は実に美しくまずぐっと引き込まれた後、各楽章ごとに変化を見せる展開はまさにオールドフィールドならでは。オンリータイムウイルテルからプレイヤーフォージアースへのラインが前半の聞き所。また後半でのハイバルナキアラムはオールドフィールド得意のアイルランドを彷彿させるメロディで、屈指の作品の一つといえよう。この後も次々と色々な展開を見せた後メインタイトルであるレット・ゼア・ビー・ライトの旋律が再び現れ盛り上がった後、最後はまるで民族音楽のようなコーラスで終了する。チューブラーベルズUのよ うな作品を出したのち、このような作品を出せるというのは、やはり天才としかいいようがない。またこの作品はエニグマ(ENIGMA)のThe Cross Of Changesの影響を大きく受けていると思われる。プレイヤーフォージアースとエニグマのリターントゥイノセンスのイントロまさにそっくり。マイケル・クレトゥはかってIslandsでマイク・オールドフィールドに協力したことがあり、言ってみればエニグマがマイク・オールドフィールドに似ているといえよう。またCD発売後しばらくしてマック用の画像がついたCDが発売された(右のジャケット)自分はマックを持っていないのでその画像は断片的にしか見ていない。ごらんになった方いわく、わざわざ買うほどのものではないとのこと。(ただLet There Be Lightのビデオクリップは斬新で僕は好き。)


Voyager (1996)

The Songs Of The Sun / Celtic Rain / The Hero / Women Of Ireland / The Voyager / She Moves Through The Fair / Dark Island / Wild Goose Flaps Its Wings / Flowers Of The Forest / Mont St Michel

前2作と同様にインストルメンタルアルバムだが、ケルトをテーマに前面に押し出しアイルランド民族音楽集オールドフィールド盤といった作品となった。事実自作の曲はほとんどなくアイルランドに伝わる伝統音楽を自分の解釈でアレンジして演奏した小品集になっている。全編にわたりのどかな雰囲気で一貫しており、ややおとなしい作品。もちろんとても質の高い作品であることは間違いないのだが、自分としてはややおとなしすぎて物足りなく感じてしまう。ただソングスオブザサンとボイジャーは名作だと思う。またおもしろいことに、ちょうどこの頃発売されたマギー・ライリーのソロアルバム彼女はシー・ムーブス・スルー・ザ・フェアーのsheをheに変えて歌っていること。またトゥーフランスを取り入れていること。 なにか両者で相談があったかもしれない。そろそろまたマギーライリーを起用してくれないかなと期待しています。このアルバムの中のThe Heroはニュースステーションのワールドカップの特集の際によく使われていた。Tubular Bells U以降のアルバムでは発売される度に必ずニュースステーションで使われているのを聴く。


Tubular Bells V (1998)

The Source Of Secrets / The Watchful Eye / Jewel In The Crown / Outcast / Serpent Dream / The Inner Child / Man in the Rain / The Top Of The Morning / Moonwatch / Secrets / Far Above The Clouds

本当に優れた作品というのは、初めて聞いたときには大きな印象はなく、数回聞いた後でじわじわと染みてくるのかもしれない。この作品は、先にXXVで予告編を聞くことができ、そのクラブミックスのため、オールドフィールドファンの間で賛否両論がわき起こった。オールドフィールドがコンピュータを駆使した音を使うことや、最近のシングルに多く見られるディスコ調のレミックスの印象のため、オールドフィールドが違う路線を歩み始めることを恐れたり、またチューブラーベルズの名前を再三にわたり使うことで、コマーシャルヒットを狙っているという批判が起こった。事実自分も少々心配をしていた。初めて聞いたときは、Uのセンティネルに相当するところで、やっぱり音に凝りすぎているかなという印象があったが、全体的には好意的に受け止めた。その後、何度も聞いていくうちに、Uの時と同様にかなりひどい中毒症状に陥ってしまった。聞き終わった後で、またすぐに聞きたくなってしまうのだ。1曲目の有名なチューブラーベルズのフレーズがとってもかっこよくアレンジされていて、それに続いていく強弱取り混ぜたメロディにど んどん引き込まれ、中間での久々のヴォーカル曲Man In The Rainでは、その美しさに魅了され、The Top Of The Morningから最後のFar Above The Cloudsのクライマックスに至るまで、隙間無く引き込まれ続けてしまう。改めてオールドフィールドの才能に脱帽した。
TB2がTBの構成を忠実に再現し、新たなメロディとテクニックを盛り込んだのに対し、このTB3はThe Source Of SecretsがTBのフレーズを利用しているだけで、あとはTBの構成にこだわっているわけではない。ただし、至る所に今までのオールドフィールドのフレーズが利用されている。Ommadawn, Amarok, The Song Of Distant Earthはその顕著な例で、特に全体的にThe Song Of Distant Earthの印象が強い。中でもMan In The RainはMoonlight Shadowのリメイクであり、ヴォーカルのCaraという人の声は、マギー・ライリーに負けない、あるいはそれ以上の味わい深い雰囲気を出してくれている。リメイクではあっても、別の曲として、ヴォーカル曲として無条件に好きになった。(日本語訳あり)(Man In The RainはHeaven's Openの際に収録が検討されたらしい。過去、彼はこの作品を何度も検討してきたようだ。)オールドフィールドの今までの集大成的な作品だと思う。今までオールドフィールドを愛し続けてきたファンであればあるほど、この作品の随所に現れる過去の作品のフレーズに感動することだろう。
自分として難を言えば、曲間に若干の空白の時間がある場合があること。ノンストップで最後まで続いた方が、まとまりがあるかなと思う。また、やっぱり少々サウンドに凝りすぎているかなとも思う。コンピュータを使わない、手作りの作品が懐かしいとも思う。これからずっとこの路線で行かないで、昔ながらの世界も混ぜていって欲しいとも思う。
1ヶ月遅れで日本版が発売された。その中にMan In The Rainの日本語訳があったが、あまりのひどさに愕然としてしまった。(詳細は日本語訳のページをご覧ください。)


Guitars (1999)

Muse / Cochise / Embers / Summit Day / Out Of Sight / B.Blues / Four Winds / Enigmatism / Out Of Mind / From The Ashes

マイクの新作のペースはこのところ2年毎だったが、この作品はTubular BellsVの発売から1年もたたない内にリリースされた。TB3発表時にすでにこの作品を予告していたから、TB3とかなり重なって作られていたのだろう。タイトル通り、ギターを全面に出したインストルメンタル小品集であり、Vayagerの構成と似ているかもしれない。しかし、その中身はその名の通り、マイクのギターを満喫できる内容になっていて、Vayagerのようなケルトの臭いや、クラシカルな臭いは強くなく、マイクの通常作品のギターの部分のエッセンスを凝縮したものといえる。最初聞いたときはアコーステック色が強いイメージがあり、少々散漫な印象があったのだが、マイクの作品の多くのように、数回聞いていくとその味わいがしみこむようになってきた。マイクの奏でるギターの音色はまるで歌詞があるかのように聴くものに強烈なメッセージを与えてくれるが、この作品もそれがひしひしと感じてくる。アコーステック曲もあり、ハードな曲もあり、神秘的な曲もあり、元気のでる曲もあり、マイクのギターの音を十分に楽しむことができる。Muse(音楽の神の名前らしい)の涙が出るような旋律から始まり、Summit Dayの情感あふれる演奏に感動し、4つの曲をあわせたようなFour WindsからラストのFrom The Ashesまでの展開にのめり込んだ後、あっと言う間にCD1枚終わってしまう。
自分の想像だが、Tubular BellsVのためにいくつか作った曲から採用しなかったものを、ギターを前面にして演奏したもののように感じる。(CochiseはSerpent Dreamのにおいがするし、Out Of Sightも、Out Of MindもTB3に混じっても違和感無いように思える。)
期待通りのよい作品だが、しいていえば、Museのような、初期3部作やAmarokの中に出てくるようなトラッド系のアコーステックの曲をもう少し混ぜて欲しかった。


The Millennium Bell (1999)

Peace On Earth / Pacha Mama / Santa Maria / Sunlight Shining Through Cloud / The Doge's Palace / Lake Constance / Mastermind / Broad Sunlit Uplands / Liberation /Amber Light / The Millennium Bell

マイク・オールドフィールドの作品の特徴として、一度聴いただけではその本当の良さがわからないということ、そして何度か聴くとひどい中毒症状、つまり何度でも聴かないとすまなくなるということをすでに主張してきた。その特徴がもっとも顕著なのがAmarokだと思うが、この作品もそういう特徴を充分にもっている。オーケストラ、コーラスが多く使われたこの作品は、初めて聴いたときにはあまりマイクらしさを感じることができず、少々がっかりしたファンも多いように見受けるが、何回か聴くと、その味わい深いメロディと深い音の重なりの味わいに魅了され、重度の中毒症状に陥ってしまう。自分の場合、購入して1週間、この作品以外全然聴かないというくらい繰り返し聴いていた。
Tubular Bells V以降のマイクの新作のペースは目覚しいものがあり、同じ年に2作が発表されるというのは実に久しぶり。ファンにとってはありがたく、かといって決して質の低いものを乱発しているわけではない。まるで自分の作品はロック、プログレッシブなどのジャンルで括れるものではないと、ありとあらゆる分野からのアプローチを懸けているかのようであり、それがファンによっては賛否両論あるといえ、ことごとく成功しているといえるだろう。
1999年の末、つまりひとつの1000年紀の終わりに発表された新作は文字どおり「千年紀の鐘」。過去2000年を振り返り、新たな千年紀につなげるという壮大な構想のアルバムだった。前作のGuitarsとも、その前のTubular Bells Vともまったくイメージは違いコーラスとオーケストラが全体に多く使われている。ジャケットにはあのベルのマークがあるから、Tubular Bellsの流れかと誤解しそうだが、全く違う。CDジャケットにはMike Oldfieldの名前の記載はなく、あの象徴的なベルのマークが無ければ、マイクの曲だとはわからないかもしれない。マイクを良く知らない人に最近の3作品を適当に聞かせたら、同じ人の作品だとは思わないかもしれない。内容は一聴するとThe Songs Of Distant Earthのような印象を与えるが、全曲を通して聞くと、今までのマイクとはちょっと違う、新たな作風だと感じる。たとえばアディエマスに似ている部分がある。これほどクラシックに近い作風は初めてではないだろうか?
各作品は紀元0年であるPeace On Earthから始まり、インカ帝国、アメリカ大陸発見、奴隷制度、アルカポネ、アンネフランクなどの過去2000年のトピックに触れていきながら、最後の2曲で夢と希望の未来を奏でている。(各タイトルとその意味はタイトル集に掲載)最初でなんとも心地よい浮遊感を味あわせてくれたあと、Pacha Mamaでアルバム全体の主題を聞かせてくれるが、これがまた素敵。マイクならではのメロディに酔わせてくれる。(コーラスでセクシーウーマンと聞こえる部分があるが、これはSaqsaywaman(サクサイワマン)と言っている。ペルーの有名な石状遺跡で、検索すればいくつかページが出てくるから興味がある方は探してみて下さい。またPacha MamaはライナーではMother Earth(母なる大地)という意味のペルーの古代語と紹介しているが、岩や山をつかさどる大地の女の精霊だということらしい。)Sunlight Shining Through CloudではHorse Guardsでのライブで登場したPepsiが初めてスタジオ盤でその声を披露してくれるが、これが前半のハイライト。中間部はややクラシカルな傾向が強くなるが、これぞマイク・オールドフィールドのメロディといえる曲をオーケストラの荘厳な音で聞かせてくれる。Liberationではマイクとアニタ・へジャーランドの間の娘Gretaがナレーションとして登場。Gretaがアンネ・フランクの日記の一節を素朴に語り、アディエマスで美しい声を聞かせてくれているMiriam Stockleyのコーラスが追っかけて聞こえてくる部分などは、天上からの音楽とさえ感じてしまうくらい。そしてラスト2曲で、本当に夢と希望の未来へむけた展開につながって盛り上がってエンディングを迎える。このあたりの展開はFar Above The Cloudsと似ていなくも無い。ラストのThe Millennium Bellはそれまでに聞いてきた曲をアップテンポで次々と聞かせてくれ、明るい希望に心を満たせながら大いに盛り上がっていく。
作品としては良くまとまって、質の高いものであることは間違いない。ただ、先述の通りまさしくマイク・オールドフィールドなのだが、いわゆるTubular Bells1,2,3, Amarokなどとは大きく異なるコンセプトであり、演奏家としてのマイクというより、コンポーザーとしてのマイクの実力を前面に出したアルバムといえるだろう。それがファンの間で賛否両論を出している原因なのかもしれない。しかしそういった議論は議論として、いずれにしても傑作であることは間違いはない。あと希望を言えば、全体で45分と短いこと。2000年の過去を振り返るのだから、もっといろいろ盛り込んでほしかった。あとジャケットも評判が悪い。2000年の歴史をイメージしたかったのだろうが、曲の内容とはまったくマッチしていない。


Tres Lunas (2002)

Misty / No Mans Land / Return To The Origin / Landfall / Viper / Turtle Island / To Be Free / Fire Fly / Tr3s Lunas / Daydream / Thou Art In Heaven / Sirius / No Mans Land reprise / To Be Free radio Edit (bonus Track) / To Be Free Pumpin' Dolls Radio Friendly Edit / To Be Free Soultonik Mix-tical Mix Radio Edit

21世紀初の新作は「3つの月」だった。前作のミレニアムベル発売後、Music Vrというヴァーチャルリアリティゲームのプロジェクトを開始し、そのゲームのデモヴァージョンCDとの2枚組CDとして発売された。曲の内容もタイトルもそのゲームのサウンドトラックとしてのものになっている。マイクにとってはThe Songs Of Distant Earth以来の念願を果たしたことになるだろうし、ゲームと音楽をセットで発売するというのはマイクが初めてなのではないだろうか?マイクが音楽以外にヴァーチャルリアリティに力をそそぐことにはファンの間に不安の声があった。ゲームを作るよりもどんどん新作を出して欲しいし、作品の質も低下したりしないだろうかと。自分もそうだったが、いざ出来あがったMusic Vrを見て、そしてこの作品を聴いてみて、その不安はとりあえず解消した。この作品はゲームに登場する風景を表現するかのように、全体的に幻想的な雰囲気をかもし出しており、聴いていると遠い世界に迷い込んだような不思議な雰囲気を感じさせてくれて、リラックスして聞ける。タウラスとチューブラーベルズの旋律を混在させたようなフレーズのMistyから始まり、マイクならではの心地よい旋律が続く。Turtle Islandにおけるアコースティクギターのフレーズの後ろで、リードギターが追いかけるように演奏されているのには心が震えてしまうし、明るい未来を期待させるような唯一のヴォーカル曲To Be Freeも全体の中でうまく溶け込んでいる。タイトル曲のTr3s Lunasでは、メインフレーズを、アコースティックギターからエレクトロニックギター、ピアノで切り替えて聞かせてくれながら盛り上がっていく。Thou Art In Heavenはタイトルの通り、アートインヘブンコンサートのラストで演奏されたベルリン2000をアレンジを大きく変えている曲。最後のSiriusのゆったりとしていながらドラマティクさを感じるのもとってもいい。全体として派手な盛り上がりはないが、ギターとピアノが多用され、心を落ち着かせて聴くことができる佳作に仕上がっている。誰にでも聞きやすいメロディが中心となっており、マイクのファンでなくてもかなり好意的に受け入れられる作品のはず。21世紀の最初をいい作品でスタートしてくれてうれしい。ただ難をいうならば、打ち込みをあまり多用せずに、多少荒削りでもいいから、素朴なマイクの音のよさももう少し残してほしいところ。最後にボーナストラックとしてTo Be Freeのシングルヴァージョンが入っているが、これは蛇足かも。 ちなみにMusic Vrも試しているが、もともとゲームにはさほど関心がない自分だが、マイクが作った異次元空間の中をマイクの曲を聴きながらさまようのも楽しいものだ。試してみる価値あり。このMVRの中にはそれぞれのキーポイントを通過すると、CDには収録されていないマイクの曲が流れる。それがまた高品質の曲であり、ゲームをそれぞれクリアしないと聴くことができないのはつらい。これらの曲をリッピングしたものを聴く機会に恵まれたがCD1枚分に相当するのだからたまらない。
遅れて発売された日本盤にはさらにTo Be Freeの別ミックスが2曲追加されている。(赤字部分) これも蛇足の蛇足かもしれないが、Pumpin' Dolls Radio Friendly Editは明るくテンポのあるアレンジで、最近の過激なミックスが多い中でも、好意的に聞ける。また日本盤はMusic Vrも含めて1枚のCDに収めており、驚いた。海外のコレクターにとってはこの日本盤には関心が高いだろう。


Tubular Bells 2003 (2003)

PART1: Introduction / Fast Guitars / Basses / Latin / A Minor Tune / Blues / Thrash / Jazz / Ghost Bells / Russian / Finale
PART2: Harmonics / Peace / Bagpipe Guitars / Caveman / Ambient Guitars / The Sailor's Hornpipe

Tubular Bells発売後、30年、マイクが30年のキャリアを積んだ後、そして現在のテクノロジーのもと、Tubular Bellsのリメイクが実現した。Tubular Bellsのリメイクとなると、Tubular Bells Uもまさしくリメイクであったはずだが、こちらは、スコアを尊重し、何も引かず、何も足さず、そのままのTubular Bellsをリメイクしている。マイク曰く、当時の録音のあやであるとか、チューニングの違いとか、当時の技術では出来なかったことを、今回は修正したかったことがきっかけだという。
発売される前は古い映画のリメイクが、ほとんどの場合は旧作を超えることが出来ないように、オリジナルのTubular Bellsにはかなうことなく、むしろイメージを損ねてしまうのではないかという心配をしていた。(今までマイクの新作には常に心配を裏切られているから、それほど心配をしていなかったが)
しかし、やはり予想が的中することなく、このリメイクヴァージョンは間違いなく傑作に仕上がっているといえる。オリジナルのTubular Bellsのすばらしさを損ねることなく、むしろ再認識させてくれる。音はどこまでもクリアで、旋律は安定し、マイクのギターの音色が何も邪魔されることなく全身に染み渡っていく。Tubular Bells特有のトランス状態に安心して入り込める。特にPart2のHarmonicsとPeaceは圧巻だ。個人的にもオリジナルのこの部分がTubular Bellsの中では最も好きで、願わくばこの部分だけでも現在のマイクのテクニックで再現して欲しいと思ったことがあり、この願いを十二分にかなえてくれた。この部分を聞くだけでも、深い音の奥に入り込んでいくことが出来、遠き古代の幻想世界にいるような気分になれる。まさに麻薬の音楽…。このような名作、まさしく人類の遺産とめぐり合えた喜びに感謝しつつ。(これがけっして大げさな表現ではないことは、このページを訪れてくださり、このレビューを読んでくださっている方は認めてくださるだろう)
ヴィヴィアン・スタンシャルの楽器紹介パートが英国のコメディアン、ジョン・クリーズに変わっていたり、Cavemanの咆哮がやや優しくなったかなとか、楽器の音色やすこしだけ違うフレーズを見つけたりとか、オリジナルとの比較をすることも楽しい。もちろんオリジナルのTubular Bellsをもう聴かなくなることなどない。あの荒削りさが、また素朴さを出し味わいを出しているのだから。  新しいTubular Bellsはひとつの完成された姿をわれわれに見せてくれたといえるだろう。感謝!。そしてさらに願わくば、Hergest Ridge, Ommadawnもリメイクして欲しい。それからこれを聴くと無性に続けてTubular Bells Uも聴きたくなってしまう。
(新作はOMS4で初めて聴いた。新作を大音響で、それもマイクファンの仲間とともに聞けるという喜びも今回味わえました)


  Light + Shade (2005)

CD1 - LIGHT : Angelique / Blackbird / The Gate / First Steps / Closer / Our Father / Rocky / Sunset / Pres De Toi
CD2 - SHADE : Quicksilver / Resolution / Slipstream / Surfing / Tears of an Angel / Romance / Ringscape / Nightshade /
Lakme (Fruity Loop)

前作から2年半も経過し、マイクの新作はいつでるのだろう。新作はオマドーンの5.1チャンネルらしいという噂くらいで、ほとんど情報が流れることが無かった。この5月くらいにマイクがMercury recordsに移籍したという情報が流れ、その後比較的早くこの作品の情報が流れたしだい。新作は小品集としては初めての2枚組みで、「光」と「影」の対になっているコンセプトになっている。一部「Surfing」でヴォーカルが入っている曲があるもののエフェクトが強く掛かっており、全曲インストといえるだろう。コーラスはコンピュータによる造作であり、一部マイク自身の声をベースにしている。
「光」は癒し系のゆったりた曲調、「影」はアップテンポでやや暗い曲調というコンセプトとなってはいるものの、それほど極端な違いではなく、全体的な雰囲気は静かで落ち着いた展開の曲が中心となっており、大人の音楽という印象で、マイクの作品の中ではおそらく、もっとも一般受けする曲が多いともいえそうな気がする。つまるところ、無難な出来であり、可も無く不可もなくという感想。したがって、マイクの長年のファンにとってみれば、マイクの作品の特徴である麻薬的要素、深みにはまる要素がやや欠けているという印象は否めないかもしれない。インパクトがもう少し欲しいところ。。。。と最初のコメントでは記載したのだが、
聴き込んでいくうちに、やっぱりマイクの特徴である良さがどんどん滲み出てきたから不思議。あるときipodでシャッフルしながら他のアーティストの曲を聴いたあと、Sunsetが出てきた時には、思わず涙がこぼれそうなくらいの美しさを感じた。何度も聴いていくうちにその良さがわかってくる、マイク特有の傾向がこの作品にも顕著に現われている。また、UK盤のボーナストラックの2作品(赤字)は、ボーナストラックとはするにはもったいないくらいの出来。Press De Toiは後述のマイクのコメントにあるように、Closerの別テイク。このテイクがいまいちだったから変えたと書いているが、それでもボーナストラックにしたのは、マイクとしても捨て置きたかったのだろう。
作品の流れとしてはTr3s Lunasの流れを汲んでいるといえ、実際、引用も多く、おなじくゲーム作品「Maestro」の中の曲も採用されているが、それをさらに昇華させ、高品質の作品にまとめ上げたといえるだろう。
長年のファンにとって、確かに物たりないという部分はあるのかもしれなが、それでもマイクの作品の種類のひとつであり、今後将来にわたり、宝物となりうる作品だ。初期の頃のPlatinum、QE2の流れを汲む、現在のマイクと思えば、不自然ではない。
このところマイクはずっと、Tubular Bells シリーズにはさむように小品集を出してきているが、この次はまたTubular Bells関連なのだろうか。それとも噂のオマドーンリメイクか?


マイクの公式サイトからマイク自身による曲の解説を抄訳してみました。

「光」サイド
Angelique (エンジェリーク)
使用しているシンセサイザーにあらかじめセットされているリズム?の名前。「通常、楽曲を組み立てていき、そして、音のピースを天使の音楽のように変えてゆく。それがどうしてやるかは説明できないが。ただキーをたたくだけともいえるだろう。3日ごとにスタジオからこのトラックを持ち出してきたが、憔悴しきってしまった。まるで出産をしたような気分だった。

Blackbird (くろつぐみ)
この曲はピアノでやりたかったのだが、自分が持っているもっとも古いもののひとつ1928年ものスタンウェイを使用した。曲のタイトルは自分のバイクホンダブラックバードから取った。曲はゆっくりしたテンポだが、スタンリーキューブリックの2001年宇宙の旅における「美しき青きドナウ」のような展開を図ってみた。バイクに乗っているときは、スピードを上げると時間はゆっくり動くように感じる。バイクを降りると空を飛びたくなり、免許も取ったが、これは結構ストレスがたまるものであり、バイクのほうがリラックスできる。

The Gate (門)
「Vocaloid」と呼ばれるヴァーチャルリアリティによるヴォーカル作成ソフトを使いたかった。素材の音を使うとあまりたいしたこと無いが、いくつかのプラグインを遣うと音がとってもきれいになった。タイトルはコーク出身の祖父の「Michael Liston」からきている。彼はある夜行方不明となり、3年後に見つかった。第一次世界大戦時にマンスター火打石銃兵として出兵し、フランスで戦った。戦後、記念の門が建立されたYpresという街での戦いだったそうだ。そこの博物館を訪れて、その際の溝?を見てきた。そのときの雰囲気を曲にしたものだ。
"
First Steps (最初の一歩)
Tres Lunas.ゲームからの音源を使用した。ゲームを始めると、砂漠の中のサボテンの前に立っているが、動き出すと音楽が始まる。ディレクターだりキーボードプレイヤーのRobyn Smithがアレンジを助けてくれた。

Closer (もっと近くに)
Ypresを旅している間に葬儀の際の聖歌を聴くことがあった。Pres de Toiという曲であることがわかり、そのケルテックヴァージョンを作ってみた。けれどヴァグパイプの音が録音した音に上手に合わなかったのでブルースに変えてみた。

Our Father (わが父)
Tres Lunas.からの音源。ローマ法王が無くなったときにこの曲を作っていた。彼の人生はなんと魅力的で、素晴らしいものだっただろう。彼が亡くなった時、それが信じられず、彼はただ自分の意識の中にしみこんでいったのだと思いたく、このタイトルにした。自分として、彼の人生すべてと死をカプセル化したような気持ちだ。

Rocky (ロッキー)
これは自分の馬の名前だ。美しいアラビアンコルトで、いつも自分のところにやってきて、抱きついてくる。彼を去勢しないままでいれば、彼はもっと魅力的な動物になってくれるだろう。

Sunset (夕日)
ヴァーチャルゲーム2作目"Maestro"では、ゲームにおける勝者になって初めて聞ける音がある。この音をヴァリエーションにした曲。 「なごみ」のアルバムを考えていたので、このタイトルはちょうどふさわしいといえるだろう。

「影」サイド
Quicksilver (水銀)
自分にとってはこの曲はダンス音楽ではない。ダンスビートがある曲だ。水の中でいるかと泡といっしょに繰り返されるようなイメージ。イビザに住んでいたとき、いるかが船に向かってお辞儀をしてくれるのを見た。そんな特別なイメージだ。

Resolution (決心)
Chalfont St. Gilesという街に住んでいたことがあるが、ここにはキャプテンクックの記念碑がある。自分は完全なトリッキー(スタートレックファン)だが、カーク船長はキャプテンクックがモチーフになっている。大西洋を航海したその船の名前はResolutionだ。この曲は氷をイメージしているが、レコーディング時はイラク戦争の最中で、いろんな部分や断片はそれに影響されていると思われる。

Slipstream (スリップストリーム)
FL Studioと契約したときに、そこのFruityLoops softwareに入っているデモ音楽を使用してもよいか訪ねた。そのリフが好きだったからだ。彼らはもちろん了解で、それでSlipstreamという名前にした。

Surfing (サーフィン)
ロボット的な音を出してくれるCantorというソフトを使って自分のヴォーカルをアレンジしてみた。とってもポップな感じになった。

Tears Of An Angel (天使の涙)
この曲は誰からがとっても悲しいときに、あなたが何も助けてあげられないときの気持ちを表現したもの。Vocaloidソフトを初めて使ってオペラ調に仕上げてみた。自分の声も使っている。とっても厚い合唱が良く出来たと思っている。

Romance (ロマンス・禁じられた遊び)
スパニッシュギターを初めて習うときに多くの人はこの曲を覚える。マイナーコードとメジャーコードで。だからこの曲のダンスヴァージョンを作っていた。しかしメジャーはうまくいかなかった。それでロマンスの暗い部分だけでの仕上げることになった。恋愛がうまくいかなくなったとき、カップルは弁護士を雇い、お互いを攻撃することになる。

Ringscape(リングスケープ)
Tres Lunasからの別の曲。砂漠を越え、トンネルを抜け、氷の世界にいたる道で、ふくろうがあなたの旅を案内するシーンからだ。Robyn Smithがアレンジを上手にやってくれた。

Nightshade (夜の影)
"Christopher von Deylen と私はお互いの曲で1曲ずつ協力し合うことにした。彼のバンドSchillerのアルバムでは自分は彼のギターを弾き、彼はこの曲でベースとドラムを演奏してくれている。Robin Smith's が一部やってくれている以外はすべて残りは自分が演奏している。


 Music of the Spheres (2008)

Part1: Harbinbger / Animus / Silhouette / Shabda / The Tempest / Harbinbger Reprise / On My Heart
Part2: Aurora / Prophecy / On My Heart Reprise / Harmonia Mundi / The Other Side / Empyrean / Musica Universalis

Mike Oldfieldの音楽のジャンルをあえて定義するとすれば、プログレッシブロック、あるいはシンフォニックロックであり、これはつまり、クラッシック調音楽をロック調で演奏した音楽と自分は勝手に解釈している。
Tubular Bellsが後にオーケストラの演奏でリリースされたように、Mike Oldfieldが仮に18世紀当たりに生まれていたとしたなら、ペートーベン、バッハ、シューベルトなどの大作曲家と同様に、その作品のすべてはオーケストラで演奏され大きな評価を得ていたに違いない。したがって、この作品は初めてオーケストラでの演奏されたものとして話題を呼んでいるが、特に驚くべきことではなく、彼の音楽の一表現方法としては当然の結果だと思う。
イントロからいきなりTubular Bellsの旋律から始まり、各チャプター毎に展開を変えつつ、魅惑的な女性コーラスが挟まれながら、まさに天上の旋律を感じさせるヴォーカル曲で前半が終わり、後半へなだれ込んでゆく構成は、従来のMike Oldfieldの作品のパターンのままで、さらに格調高く、心地よく肩の力を抜いて聞くことができる。 各チャプターの曲名はあまり意味が無く、Part1、Part2と2曲構成と考えて聴くのが正解。時々挟まれるマイクのギターの旋律、ピアノ、ヴォーカルなどは、まさに天上のゆりかごに揺らされているかのような浮遊感を感じさせてくれる。アディエマスのカール・ジェンキンズのプロデュースの影響もあるのだろうが、全体的に無難な美しい仕上がりであり、極上のヒーリングミュージックの分野にも入る作品となるだろう。
しかし、難を言えば、Mike Oldfieldの作品によくある、独特の毒の部分、つまり麻薬的な部分がほとんどなく、どんどんのめりこんでいくような中毒性があまり感じられない。たえとえば第一印象が極めて悪いが、やがては虜にされてしまったAmarokの対極にある作品と感じる。たとえればAmarokは、さして美しくはないが、ひとたび惚れこんでしまい、深みにはまっていってしまう悪女だが、この作品は誰からも美しいといわれだろうが、心までは深く奪われない美女。。。
もう一味スパイスが欲しいというのは贅沢だろうか。