あるカメラマンの独り言
 シリーズ No.012
「ヘリコでGo! 5 」〜X-Planeで行こう!〜
空飛ぶトラック?
(Japanese Text Only)



X-Plane V5.66 Kaman K-MAXの画面

 (前回「ヘリコでGo!4」より続く)
「コイツ(アレ)」はV5.66でなければ動かない。さらなる挑戦は続く。
さて、アレとは何か、ヒントは日本に2機しか存在しないとてもユニークな機体である。

 さて、その機体とは カマンK-Maxである。(日本での登録名称はカマンK1200)
こんな変わった機体で飛ぶことの出来るFSが今まであっただろうか?
K-MAXは交差式反転ローターを持つユニークな機体というだけでなく、実はちょっとした思い出がある。

1992年ラスベガスで開かれたHeli Expo92、
カマン社(Kaman)のブースでK-MAXを初めてみたときにはその奇怪さに驚いた。
横幅が狭く非常にスマートだが頭でっかちで、お世辞にも「かっこいい」とは言えない。
色は黄色と黒のツートンで、長く尖った鼻と耳のように突き出したローターマストカバーはキツネの顔を思わせる。しかも採用しているのは交差反転式ローター式。 これは2枚のロータをV字型に角度をとってとりつけ、それを互いに反対方向にシンクロ回転させて、トルクを打ち消すというもので、同社のお家芸とも言える。

この方式はカマンH13ハスキーで何年も前にも採用されている技術のリバイバルで、この機構部をよく見て貰うために機体の横に階段が設けてあるのだが、上から見下ろすと2枚のブレードが想像以上に長くでかい。
機体には Experimental(実験機)と書かれていたがとにかく全体的にゴツくて、まさに鉄の塊、いかにも重そうで本当にこんなものが飛ぶのか?というのが第一印象であった。

 そして、もっともユニークな点は「一人乗り」ということ。

入手した分厚いプレスキット(報道関係者用資料)には資材運搬用の"Aerial Truck"(空飛ぶトラック)と紹介されていた。

物輸(物資輸送)専門で資材を機外に吊り下げて運ぶ為、キャビンが不要となり、このように極端に細い胴体に出来るのだが、今までこの大きさで一人乗りの機体は存在しなかった。
という訳で何から何まで変わっており、機体の周りはいつも人だかりがしていて、撮影どころではなかった。

  さて、こんな混雑した会場ではあったが、幸運にもカマン社のCharls,Kaman会長にインタビューすることが出来た。
背が高く初老の紳士という感じで、とても穏やか。 質問にも非常に丁寧に答えていただいた。
あとで外国人記者に聞いたところによると、このカマン氏、航空業界の偉大な発明家(パイオニア)としてアメリカ各地の航空ショーなどではサインをねだられるほどの人気者なのだそうである。

  翌93年、マイアミで開かれたHeliExpo93ではテールの水平安定板に新たに垂直補助翼が追加されていた。

この1年間にさまざまな試験を繰り返し、改良された結果と思われるが、この時は昨年に比べ宣伝も控えめで、人だかりも少なく、今回はコクピットに座ることが出来た。
実際に座ってみるとその狭さに驚いた、攻撃ヘリコプターAH-1コブラに勝るとも劣らない狭さである。
但し、計器の数はこちらの方がずっと少なく、非常に殺風景な感じを覚えた。

<--実機の計器盤。試作機の為、量産型とは異なる


Heli Expo92 Kaman Official photo
Heli Expo93 垂直補助翼の追加に注目

 AH-1の話が出たついでという訳ではないが、
この頃、同じような構想でコブラリフター (Cobra Lifter)というアイデアが発表された。
軍払い下げの攻撃ヘリコプター、AH-1コブラを改造して武装を外し、胴体下にスリング装備を搭載、その強力なエンジンを物輸に使おうという発想である。
これは面白いと思った。 K-Maxのような新たな機体を開発するよりずっと安価で効率的である。
世の中、色々な考えを持つ人が居るものだ、ひょっとするとこちらの方が売れるかも?と思った。

 ところが、K-MAXはスイスをはじめ、欧米で好評。順調に売り上げを伸ばした。
物輸に特化した機体というアイデアが成功したのである。
世の中、ビジネスを征するには市場が何を望んでいるかというマーケティングニーズをガッチリつかむことが不可欠、とあらためて思った。


 その3年後。
1996年、本機が遂に日本に導入、撮影のチャンスが巡ってきた。
この頃にはK-Maxは珍しい機体ではなくなっており、欧米では機体に派手な模様を描くのが流行し、色鮮やかなカラーや水玉模様のものまで現れた。(山中での作業が多い為、、視認性をよくする目的と思われる)
さて、日本ではどんな色になるかと興味津々だったが、ハンガーから引き出された機体には鳥に見立てた美しい塗装が施してあり、日本もなかなかやるものだ、と思った。

  いよいよローターを回しはじめた。
私の想像では、あのでかいローターをブン回して轟音と共に重々しく飛ぶのだと思っていた。
ところが実際にはローターの回転はゆっくりで、音は軽く、非常に静か、シュワシュワという感じで、まるで蚊トンボのようにフワリフワリと軽快に飛ぶ、これにはあっけにとられた。

 さて、この機体、実際コストパフォーマンスが高い。
・テールローターがない為、エンジン出力をそのまま揚力に回せるのでパワーロスが少ない。
・2.7tもの吊り下げ能力に比べ機体が軽量、しかも頑丈で価格が安い。
・整備性がよく、かつパイロット1人だけなので、運航費が安い。
  (ただ、なんでも1人でこなさなければならないのでパイロットは大変だと思うが・・)

  このような理由から運航会社からは好評を得、翌年には2機目が導入されたが、その後物輸需要の落ち込みなどにより、3機目の導入には至っていない。
という訳で日本にはたった2機しか在籍しておらず、しかも仕事の性質上、大概は山中に居り、なかなか実物にお目に掛かれない。


 さて、説明が長くなったが、以上の体験から、機体の出来を評価すると・・

1. コクピットにディジタル計器が並び、実機と異なる。
  (右の写真は量産タイプの実機計器盤)
2. ローターは高速回転して円盤になっているが、前述のように実際は ローターブレードの形が分かるほどゆっくり回る。
  (このソフトでは再現は困難であろう)
3. オリジナルのローター音に関しては、こんなもんだったかな?
  という程度。
(なにしろ実際に聞いてから何年も経っており、記憶があやふや)

以上の理由により、ちょと違和感があるものの、全体のプロポーションはなかなかで、よく感じをつかんでいると思う。よくぞ、こんな機体を、と製作者に拍手を送りたい。               

 で、肝心の操縦だが、旋回が難しい・・ように感じた。
バンクをとりすぎて、ローター同士がぶつかるのか?すぐにバランスを崩してしまう。
操縦を楽しむより、外部ビューモードにして、機体を色々な角度から眺めるのも面白いかも知れない。
一見不格好だが、時には攻撃ヘリコプターなみのスマートなシルエットも見せる。
そんなK-MAXの姿を見てみたいという方には、是非、ダウンロードをおすすめしたい。


  さて、K-MAXは"Aerial Truck"(空飛ぶトラック)、物輸専門の機体である。

実際に我が国でも木材搬出で多大な効果を上げており、 このパソコン画面の中でもちょっと何かを吊り上げてみたいという誘惑にかられる。
しかしX-Planeは純粋に操縦を訓練するソフトであり、このような「遊び(?)」がないのが残念だ。
「木材搬出とか物輸のシミュレーションがあってもいいのになぁ・・」
とブツブツ言っていたら、それを聞きつけたスタッフの一人に
「それはホバリングが正確に出来る人のセリフ!」 とすかさず冷やかされてしまった。
「失敬な! クビにしたろか?!」と一瞬思ったが、
コントロールに四苦八苦、横転した機体を見て、「まさに正論・・」と返す言葉がなかった。

・・という訳でしばらくは、まじめにベル206で訓練に励んでいたのだが・・
しかし、また見つけてしまったのだ、別の楽しみ方を、ウフッ。
さて、その楽しみ方とは何か? 続きは次回。 To be continued.

2001/05/26

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