生命(いのち)の輝き <スターオブライフ>

 


 前回は東海大学病院に於けるドクターヘリ、ユーロコプターEC135の救急搬送の様子をレポートしたが、 EC135は現在岡山県の川崎医大に常駐している。
最近読者の方から写真が送られてきたが、今度は垂直尾翼(フェネストロン上部)に新たに「スターオブライフ」のマークが入った。
 そこで今回はこのスターオブライフの特集を企画、また巳年にちなみ「ヘビと医療についての意外な関係」についても併せてふれてみたい。



川崎医大に常駐している中日本航空のEC135(JA112D)
垂直尾翼上部にスターオブライフのマークが見える
(かわうそ氏 撮影


スターオブライフについて

 スターオブライフ(STAR OF LIFE)は救急医療(以下EMS)のシンボルで「生命の輝き」を表す。
当時、アメリカのオマハではEMSのシンボルとしてオレンジクロスと呼ばれる、白地にオレンジ色の十字をあしらったものを使用していたがアメリカ赤十字から模倣であるとの批判を受けたために、1973年にレオ・R.・シュワルツ(当時National Highway Traffic Safety Administration(NHTSA)のEMSチーフ)によって新たなシンボルとして作り出された。
その後1977年2月1日にアメリカで意匠登録されたが1997年に期限が切れ、現在では世界中の救急救命士や救急車等にも使用され、EMSには欠かせないシンボルとして定着している。
ヘリコプターに描かれているものとしては SAMU(サミュ:フランスパリで活躍するEMS機関)が有名。

オマハ:デンバーとシカゴのほぼ中間地点に位置する中西部の町)


スターオブライフの放射状に伸びた6本の柱はそれぞれEMSの機能を表している。
1 DETECTION・・・覚知
2 REPORTING・・・通報
3 RESPONSE ・・・ 応答(迅速な行動)
4 On Scene Care ・・・現場手当
5 Care In Transit ・・・搬送中手当
6 Transfer to Definitive Care ・・・医療機関への引き渡し

 以上はEl Dorado County Search & Rescue Home Page
(Information from the Rescue-EMS Magazine July-August 1992) 他を参考に要約致しました。


浜松の聖隷三方原病院に常駐している中日本航空のアグスタA109K2
(JA111D)  胴体側面中央にスターオブライフのマークが見える
(かわうそ氏 撮影

医療とヘビとの意外な関係  

 スターオブライフの中に描かれたヘビの巻き付いている杖はやはり医療のシンボルでアスクレピオスの杖と呼ばれる。 ではなぜヘビか?

ヘビはアスクレピオスの化身であり、その彼が持っていた杖で病を治すといわれている。


アスクレピオスの杖(つえ)についてK2記事より加筆再掲載

  ギリシャ神話に出てくるアスクレピオス(Asklepios)(またはAesculapius)が持っている杖のこと。
彼は太陽神アポロンの子。半身が馬のケンタウロス族の賢人ケイロンから医術を教わり死から人間を救う術を覚え、死者をも蘇らせたという。 しかしこれが冥王ハデス(死の世界の王)の怒りを買い、殺されて星座(蛇つかい座)にされてしまった。死後、父アポロンにより名誉を回復、医学と治療の神として崇められることとなった。
 古代ギリシアでは蛇を神聖視しており、また健康のシンボルと考えられ、ローマで疫病が流行した際にアシクレピオスが蛇の姿で現れ市民を救ったという伝説もある。
そして彼が持っている杖は父アポロンから贈られたもので、1匹の蛇がからみついており、今日医療関係のシンボルとなっている。  
  尚、よく混同されるが2匹の蛇が巻き付いているものは「ヘルメスの杖」と呼ばれ金融や商業のシンボルマークなどに使われており、これとは別物。


 また、もう一つ下記のギリシャ神話からとったとの説もある。

 砂漠を旅する賢者の食べ物が底をつき、あとは死を待つのみとなってしまった。
そして最後の夜、死を目前にして賢者は夢を見た。
その夢に白い蛇が現れて、こう言った。
「そなたの持っている杖で砂を掘ってみなさい」。
言われたままに砂を掘ると、水が湧いてきた。
こうして、
賢者は命を救われた。

・・この言い伝えから、蛇を「知恵」、杖は「命」にたとえられるようになったという。

「旧約聖書-創世記」ではアダムとイブは禁断の実を食べたため、神の怒りに触れ、エデンの園を追放されるが、イブをそそのかし禁断の実を食べさせたのはヘビである。一般に蛇はサタン(悪魔)であるといわれる。それゆえ悪者の代表のように言われているが、このように知恵の象徴であったり神として崇められてもいる。我が国でも岩国の白蛇は神聖な蛇とされている。恐らく古代に於いては足のない独特の姿が一方では邪悪な、一方では神秘的な二つの異なるイメージを形作ったのだと思われる。

 奇しくも今年は巳年、ヘビのいいイメージが優先される年である。
そして、試行の名称がとれ、いよいよドクターヘリの本格的運用が始まる年でもある。
7月にはモダンホスピタルショウ2001の開催も決定。ドクターヘリへの感心ももっと高まるだろう。
たくさんのヘビが現れて、昨年よりももっと多くの命を救って欲しいと、切に願う次第である。

蛇足(筆者の独り言)

 実は「スターオブライフ」の名前は昨年夏に乗った飛行機の機内通販誌で知った。
海で溺れた人を救助するライフセーバーなど屈強な男達もこのシンボルをつけていることから、スターオブライフは以降、男の中の男、誇りあるシンボルとしてEMS以外の商品にも使用され、これがついたものは特に人気の高いアイテムとなっているという。私が見たのはライターか何かだったと思う。
 「 K2記事でアスクレピオスの杖を調べるためギリシャ神話を勉強したのは何だったのか?」 と一瞬頭を殴られた感じがし、その場でそのページを破り取り、資料にする為に持ち帰ってきた。
(表紙に「ご自由にお持ち下さい」とあったので、犯罪にはならないと思う)

・・ ということで、いつかは訂正記事をと思っていたところ、かわうそ様から写真が送られてきて、記事掲載を思い立った次第である。
このシンボルがたとえコレクターアイテムだとしても、世に出てくれることは嬉しい限り。
これをきっかけにEMSにもっと感心を持って貰えたらと思う。

 さて、今後稼働し始める新しいドクターヘリにこのシンボルは果たしてつくのか?
非常に気になるところである。

2001/01/20



Back

 

Home

What's New

Introduction

Special

Photo Gallery

News/Info

Bar222
(Essay)

Link

 

All right reserved. Copyright(C) 2000, "Rotor Wind"