事例研究(4):メインマイクの位置と「追い込み」

メインマイクの位置をどこにするか?ワンポイント、マルチを問わず、クラシック録音
ではメインマイクの位置が録音の出来・不出来を大きく左右する。
過去の個人的経験から、マイク位置とサウンドの関係を下のように一般化してみた。
もちろん、ホールの音響や使用マイクによって得られるサウンドは変わるので、録音の
つど「追い込み」が必要。

音源からの距離

近いほど直接音が多いので明瞭に、遠いほど間接音が多く輪郭がぼやける。
ソロ楽器は30cm〜3m。オーケストラの場合は指揮者の後ろ1〜2m位。
一般に、マイクからの距離が3〜4mを超えると輪郭がぼやけはじめる。

マイクの高さ

距離のバリエーションで、高いほど遠くなる。大編成の場合、距離(位置)と高さ
でセクション間のバランスが変わる。
また、床の反射音の影響がなくなるので、高いほど「抜け」がよくなる傾向。
無指向性マイクで低域がだぶつき気味の場合も高さで逃げることもできる。
3点吊りの高さは2m〜5m。

音源に対する角度

マイクの軸方向を音源に向けると直接音が、軸を音源から外すと間接音の成分が増える。
マイクの特性により、軸方向と軸から離れた方向で周波数特性が変わるので、録音
の音色(color)を聴きながら角度を決める。単一指向性マイクはもちろん、無指向性
でも角度によって微妙にf特が変わるマイクもある。


マイクから見た音源の広がりを「録音角」と呼ぶ。ソロの録音角は0度に近く、合
唱団や大編成オケでは録音角は120度以上になることもある。

*マイクやステレオバーの向きがセンターからずれていると、想像以上に左右バランスが
 狂うので注意しよう。

ステレオマイクの開き角

単一指向性マイクでは(間隔30cm、90度)のNOS方式、(間隔17cm、110度)のORTF
方式が有名。
音源の大きさ(舞台配置)、音源からの距離、マイクの指向性や録音角(上記)、
ホールの音響、直接音と間接音のバランスなどを総合的に考慮して開き角を調節する。

ステレオマイクの間隔

2本のマイクの間隔はステレオ・イメージに関係する。
基本は17cm〜60cm。広すぎると「中抜け」するので気を付ける。

大編成の場合は広めにして音源相応の広がり感が出るようにする。
残響の多いホールではステレオ感が出にくいので、広めにする。

反響板の影響

音源の位置、楽器の指向性によって、反響板の影響を受けやすいものもある。
特にホルンはベルの向きと反響板の関係でバランスや方向性が大きく変化する。
反響板や床からの反射音が強いと位相が干渉することもあるので、マイク位置は
反響板の影響を受けにくい所がよさそうだ。いわば間口の真ん中あたり。

「追い込み」

仮セッティングでリハーサルを録音してサウンド、ノイズなどをチェック。
ステレオ感、f特やセクションのバランス、直接音・間接音のバランス、抜け
等を考慮してセッティングを詰める。モニタールームで聴いてみるとよい。

参考サイト

DPAのサイト Microphone University>Application>A-B Stereo Classical Orchestra

M-AUDIO Record Now! Chosing & Using Microphones
http://www.m-audio.co.jp/download/direction/Record_Now_Mic.pdf


今回のまとめ

クラシック録音ではメインマイクの位置が録音の出来を大きく左右する。

マイクの特性を把握して距離・方向を詰める。

録音を聴いて細かく追い込もう。


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