事例研究(5):M-Audio DUO(USB インターフェイス音質比較・続)

M-Audio DUO

私のUSBインターフェイス遍歴もついに4台目。今回はM-Audio DUOの使用感をレポートしよう。
スペックはM-Audio JapanのHPで見ていただくとして、音質と使い勝手に焦点を当ててみたい。
私は同社のAudiophile2496(以下AP)も使っていて、かなり気に入っている。DUOはAPと同等
の音質をUSBで実現しえているのだろうか?
購入にあたり、ネット上のDUO所有者に訊ねてみたら、かなり満足度が高いようだった。APとDUO
両方使っている方もいた。(使用レポに感謝)。『サンレコ』2002年8月号USBインターフェイス
特集でも好評だった。

再生音

再生音はダイナミックレンジが広く、透明感があり、ややアタックの柔らかいM-Audio
独特の音。再生音にかんする限り、APとほぼ同等と言える。
他社のUSBインターフェイスの音がスピーカーの位置で平板に鳴っているきらいがあ
るのに対し、DUOの再生音はスピーカーの向こうに演奏者と空間が実際に広がってい
るように生々しく聞こえる。

録音の音質

録音ファイルをCDに焼いて聞いてみた。
「USBで録音した音はどうも帯域が狭くて・・・」というのが従来の常識だったが、
DUOは周波数レンジが高域方向に広く、USBにありがちな「鼻をつまんだ感じ」がない。
どこか弱い帯域がありそうなのだが、柔らかなアタックも相まってつながりのよい音
にまとまっている。ダイナミックレンジが広いのも特筆すべき特徴。原音忠実という
よりは「M-Audioの音」なのだが、USBのなかではかなり高水準だと思う。
解像度・透明感はPCI型のAPに一歩及ばない気はするが・・・

使い方〜STAND ALONEモードでダイレクトモニタリング

オーディオインターフェイスの機能は録音・再生に尽きるが、単体マイクプリ(ス
タンドアロンモード)としても使えるDUOは、モバイル場面で活用法がさらに広がる。
このスタンドアロンモード、マニュアルを読んでもわかりにくいが、なかなか面白い。

その前に・・・

・入出力端子と感度

DUOはXLRのMIC入力とTSフォーンのLINE入/出力(アンバンランス)がある。MIC
入力には2ch分のトリムつまみ、レベル&ピークインジケーターLED、パッドボタンが
付いている。対してLINE入力はゲイン調整がまったくできず、素のまま。なので、
ここにDAT等のピンケーブルから入力しようとすると大変!ピン→標準変換プラグで
入れてもレベルが低め。しかも調整不能。ミキサーでゲインアップして送り込むしか
ない。あるいは、MIC入力に入れてマイクプリでゲインを稼ぐ。この場合も、ピン→
標準変換プラグ、標準→XLR変換プラグを重ねて10cmほどの変換プラグ長となり、
滑稽。

がともかく、マイクプリでゲインアップすれば適正レベルで入力でき、ノイズ・歪みの
点でも特に問題ない。ただし、DAT側のLINEレベルによっては(LINE入力では低すぎる
のに)MICゲインを最低にしてもレベルオーバーすることがあり、パッドボタンを押して
ゲインつまみで上げなければならない場合もある。(例えばオンキョーSE-U55なら、
ピンケーブルでつないでレベルつまみをまわすとLRチャンネル同時にレベル調整できる。)
DUOはバランス接続の業務用機器を主に想定して設計してあるからなのだろう。このあたり、
初心者にはちょっと敷居の高い製品かもしれない。
(その点、新製品AudiophileUSBはピンジャック入出力があり、デジタルも入出力できる。
ライン中心の用途ならこちらも有力選択肢となろう。4IN/4OUTのQUATTROもある。)
デジタル端子はS/P DIF同軸出力のみ。デジタル出力はスタンドアロンモード時に、
LINE OUTと同じ音をデジタル出力する。

・単体マイクプリ&ADコンバータとして使う(スタンドアロンモード)

本体前面のSTAND ALONEボタンを押すと、DUOを単体マイクプリ/ADコンバータと
して使うことが出来る。デジタル出力のサンプリングレートは本体裏面にある小さな
ディップスイッチで設定する。(44.1/48/88.2/96kHz) 
ただし、接続する機器がSCMS対応製品だとプロテクトがかかって使えない。

・USBインターフェイス+ダイレクトモニタリング(スタンドアロンモード)

じつはスタンドアロンモードの使い方こそ、DUO使いこなしのポイントだった。
スタンドアロンモードOFFの場合、DUOは通常のオーディオインターフェイスとなるが、
録音中はダイレクトモニタリングできない。ヘッドホン、LINE OUTとも、ソフトの
IN/OUT(モニタ)設定で若干レイテンシーを伴った音が出力される。コンピュータ
の処理速度が遅いと、この再生音に音切れが生じることもあった。
こんなとき、STAND ALONEボタンを押すとゼロレイテンシー・ダイレクトモニタリン
グが可能になる。しかもUSB入力は生きたまま。このモードはとても便利だ。例えば、
こんな使い方が出来る。

信号の流れ(STAND ALONEモード時)

マイクDUO -[USB] ノートPC 

       -[LINE OUT] DAT 

DUOをマイクプリ+USBインターフェイスとして使いながら、同時にDATにも分岐して
LINE OUTで送ることが出来る。わざわざミキサーを持って行かなくて済むので、モバイル
場面では便利だ。
(筆者は使い慣れたDATにマイク入力し、LINE OUTからUSBインターフェイスに接続して
バックアップすることが多い。しかしこの場合、何らかのトラブルでDATが止まると
USBへ行くLINE OUTも止まるので、バックアップの用をなさない。その点、上記DUOの
スタンドアロンモードならDATが止まってもPC入力は止まらずに済む。)

ふたたび音質

ピアノ発表会と室内楽アンサンブル、オーケストラに使ってみた感想を。

・ピアノ (サンプル)
ダイナミックレンジが広いので臨場感は十分。しかし時として音がバラバラに聞こえる。
打鍵のむらが実際以上に強調されるような・・・コンプをかけると調整できるかもしれない。
低域がやや弱く、どこか電子ピアノ風の音になる傾向も。

・木管アンサンブル (サンプル)
かなりいける。M-Audio独特の柔らかい音色がマッチしている。
しいていえばファゴットの低音がやや弱い。

・弦楽器 (サンプル)
ビオラまでの音域なら十分。ヴァイオリンの胴鳴りも忠実に再現するが、高音域はやや硬めになる。

・オーケストラ
ダイナミックレンジが広いので、mpとmfの音量差、音の張り出し感が明瞭に聞き分けられる。
「ボレロ」など、曲を追うごとに編成が大きくなり打楽器がクレシェンドするのがリアル。
アタックが柔らかいこともあり、全体的な解像度はもう一息。

*以上はすべて16bit/44.1kHzで使用した所見である。24bit/96kHzも今後、試してみたい。
USBの音質をベタボメするとネット仲間に耳を疑われるので(^^;) 、音質評価はあえて辛口を心がけた。
#これで満足できなければ、次はMOTU896しかない。

安定性

ASIOドライバで使うと、安定性はまったく問題ない。半日使っても音切れすることはなかった。
しかしOS9のサウンドマネージャで使うと、同時録音再生時に音切れや雑音が目立った。
コンピュータの処理能力やメモリにも依存すると思われる。(iBook300MHzで使用)
通常はASIOで使うべきだろう。


今回の結論(^^)/

「USBは使えない」という認識は改めなければならないかもしれない。
安定性について。またいくぶんか音質について。

Duoは、Audiophileと同等の再生音をもつが、録音の音質はPCI型のAudiophileに一日の長がある。

単体マイクプリ&ADCとしても使用可、ダイレクトモニタリング、ASIO対応などがDUOのメリット。


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