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この文は、2002年4月2日にメーリングリストに投稿した文章を再録したものです。
- 音楽CDにコピープロテクトをかけることに対して疑問を呈する意見をウェブに掲載しましたところ、賛否両意見が寄せられました。
- 賛成派は、アナログと異なりデジタルの場合は、コピーしても音質に変化が無いから云々という陳腐な意見で、これは結果的に音楽CDの消費者全員が違法著作ビジネスを行う人間とみなすことではないかと私は思います。
- 私は、デジタル社会における音楽産業のビジネスモデルについて議論しなければ、この問題の本質には迫れないのではないかと思っています。
- マルコーニによって無線技術が実用化されたとき、この技術は、1対1の通信に使うことが本命とされていました。無線は、受信機さえ用意すれば、誰でも傍受できるので、不特定の人に益する内容を発信しても代金の回収ができないことが最大の理由でした。
- 反面、ベルが実用化した有線電話技術は、不特定の人を相手にする放送に使われました。電話が実用に供された最初の例として大統領選の結果速報が有名です。有線の場合は、受信機の所持者が特定できるので、不特定の人に益する内容を発信すれば、電話機の普及につながり、代金の回収も容易だが、個人同士の1対1通信は、緊急事態でもなければ不要なので、そのために、高額の電話契約などをしてくれるとは思われていなかったようです。
- それがその後。主として、無線は放送に、有線は1対1の通信に使われるように変わったのは、放送事業や電話事業のビジネスモデルが確立したからです。
- もっとも最近は、これが再逆転して有線網はインターネットで不特定多数相手に、無線技術は携帯電話として1対1の通信に使われるようにもなりました。
- 現在、CD/RWなどの普及によって、CDが自由にコピーできたり、MP3などのファイルにして個人同士がCDのコピーをやり取りすることをレコード会社が問題にしていますが、個人が自分自身のために他人の著作物をコピーしたり、改変することを許さないことにすれば、音楽に限らず、芸術全般の発展に大きな齟齬をきたすことになると思います。
- 過去100年ほどの間に、レコードやラジオ、CDにテレビといった新しい媒体が、音楽産業をその前の時代とは根本的に変えてしまいましたが、現在また音楽産業に新しい変化の波が押し寄せているのではないかと思っています。
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