Wellpine Music Club 音楽メモランダム (2004年掲載分)

 目 次

 権利問題をクリアするP2Pサービス (December 7, 2004)
 JR東京駅の“エキコン”復活! (September 19, 2004)
 いよいよ新流通革命が始まるか (September 3, 2004)
 Winny開発者逮捕の報道姿勢 (May 23, 2004)
 アップルコンピュータの愚行? (April 18, 2004)

過去の掲載分  2003年   2002年   2001年   2000年   1999年


権利問題をクリアするP2Pサービス (December 7, 2004)
  • 「Napster」の開発で一躍有名になったShawn Fanning氏が新しいビジネスをはじめます。
  • Shawn Fanning氏は、NapsterのようなP2Pによる音楽配信サービスで非合法な利用を防止する技術「Content Identification Service」を開発し、提供する会社SNOCAP, Inc.を設立しました。
  • 「Content Identification Service」は、P2P型の音楽配信サービスでやりとりされる楽曲を管理し、楽曲の権利者が配信を許可していないコンテンツの流通を阻止できる技術で、2005年にもサービスが開始される計画です。
  • 米Universal Music Groupは、この技術を用いたサービスに同社が保有する音楽コンテンツの全てをライセンスすると表明しました。
  • これによって、これまで大手レコード会社がP2P型の音楽配信サービスに楽曲提供を拒んできた違法コピー楽曲の流通が防止できれば、音楽の新しい流通方式の前途が明るくなるのではないでしょうか?
  • 米Wurld Media, Inc.が先月発表しましたP2P型音楽配信システム「Peer Impact」に、米Sony BMG Music Entertainmentや米Universal Music Group、米Warner Music Groupが音楽コンテンツを配信する許可を与えたニュースとあいまって、今後の展開が楽しみです。

関連サイト:
 Content Identification Serviceの発表記事
 Wurld Mediaの発表記事

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JR東京駅の“エキコン”復活! (September 19, 2004)
  • 2000年11月に最後のコンサートを團伊玖磨さんの指揮、オーケストラアンサンブル金沢の演奏で締めくくった「とうきょうエキコン」が来月復活します。
  • 復活後は音楽監督に池辺晋一郎さんを迎え、名称も「赤煉瓦コンサート」となります。
  • まず最初は10月に、1st Series「若き才能の調べ〜 音楽大学生コンサート」4 日間、次月に、2nd Series「東西の響きコンサート」3 日間の全7 日間開催の予定です。
  • 出演者、プログラムなどの詳細は主催者の(財)東日本鉄道文化財団が発表したPDFファイルをご覧頂くとして、概要は、次ぎのとおりです。
  • ・赤煉瓦コンサート
     開催日:1st Series 2004年10月13日(水) 〜 10月16日(土) 4 日間
          2nd Series 2004年11月18日(木) 〜 11月20日(土) 3 日間
     開演:平日18:00 〜 19:00(最大19:30まで) 土曜15:00 〜 16:00(最大16:30 まで)
     場所:JR東京駅丸の内北口ドーム
     入場料:無料
     問合せ:(財)東日本鉄道文化財団(03-5334-0623)

関連サイト:
 赤煉瓦コンサートの発表記事(PDFファイル)
 音楽メモランダム「さようならとうきょうエキコン」
 (財)東日本鉄道文化財団のホームページ

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いよいよ新流通革命が始まるか (September 3, 2004)
  • 9月1日に米国でMSNがオンライン音楽販売サービス「MSN Music」のベータ版を立ち上げました。
  • 価格は1曲当たり99セントで、アップルコンピュータの iTunes Music Store と同じですが、アップルが再生機として iPod しか考えていないことに対し、こちらは、70種以上の Windows Media 対応機器全てと Windows XP Media Center Edition 搭載パソコンで再生できます。
  • 本年4月に本欄で指摘しましたように、アップルコンピュータは、まさに「愚行」を演じているように思います。
  • このような試みは、本来なら、レコード会社が行うべきことのように思いますが、彼らは、既得権益を守ることに必死のようです。特に、日本のレーベルは、iTunes Music Store にも楽曲を提供しないとしているので、アップルも日本ではサービスを開始できません。
  • Microsoft も日本では苦戦するでしょうが、音楽流通媒体の時代の流れは、レコード → CD → インターネットと流れているので、既得権益者が敗れるのは時間の問題だと思います。
  • そのためには、アーティストと聴衆が歩調を合わせて、新流通機構をサポートしていかなくてはならないのではないかと思います。

関連サイト:
 MSN Music ベータ版
 CNET News の記事

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Winny開発者逮捕の報道姿勢 (May 23, 2004)
  • ファイル交換ソフトWinnyの開発者が逮捕された事件に関しては、5月10日の新聞各紙に報道され、他のメディアにも報道されていますが、少なくとも私が接した報道はどれもこの事件の意味の重要なところに踏み込んでいないように思えます。
  • 結論から書きますと、現在の著作権法は、アーティストの権利を保護し創造性の向上に資するという本来の目的ではなく、CD会社、映画配給会社などのアーティストを商業的に支える会社や団体の既得権益を保護するために存在するかのごとき状態になっていることが問題の本質であると思います。
  • 報道機関からは、新しい音楽の流通機構に関する問題提起は無く、現在の既得権益者と同じ立場でこの事件を取り上げています。要するに彼らは、現在の流通機構の枠内でしか著作権法を見ていません。
  • 現在の著作権法もここ100年位の間に整備されたもので、その前提として、デジタル複製やインターネットによる流通などは視野に入っていませんでした。
  • ところが現在では、話を音楽に限っても、これまでの技術では簡単には複製できなかったCDやDVDが誰でも簡単に複製できるようになりました。また、流通チャネルも、今までの卸小売などを含む物流に頼る必要が無くなりました。
  • このような技術革新のもとでは今までの音楽コンテンツの流通方法を変える必要があります。Winnyの開発者である47氏(彼は2ちゃんねるの投稿者名から47氏と呼ばれています)も本来の著作者には十分な収入を保証し、その権利の享受者には安価に提供できるようになることを望む発言もしています。
  • 要するに、新しい技術を駆使すれば、アーティスト、リスナー双方に利益になる方法が考えられるはずであるにもかかわらず、現在の音楽業界関係者は既得権益を守ることに汲々としています。
  • 私は、以前、「ファイル交換ソフトを提供する会社が著作権法に違反していると言うなら、コピー機の製造会社も著作権法に違反しており、包丁や鉄砲の製造業者は、殺人幇助罪にもなりかねないのではないでしょうか?」と書きました。
  • 現にこれまで、世界中で数多くのファイル交換ソフトが開発されていますが、その開発者が逮捕された例は皆無です。今回の47氏が世界初となりますが、その逮捕理由は、ファイル交換ソフトを開発したからではなく、それを悪用することを支援(著作権違反幇助)したからと言われています。
  • 実際にそうであったかどうかは分かりませんが、47氏が2ちゃんねるに投稿した記事(下記に引用)からは、47氏にその意思があったようにも取れます。その意味で、47氏には、勇み足があったのではないかとは思います。
  • 今回の逮捕の裏に、既得権益者からの圧力があったなどということが無いことを祈ります。

47氏の投稿(2002年4月11日)文の引用:
個人的な意見ですけど、P2P技術が出てきたことで著作権などの従来の概念が既に崩れはじめている時代に突入しているのだと思います。
お上の圧力で規制するというのも一つの手ですが、技術的に可能であれば誰かがこの壁に穴あけてしまって後ろに戻れなくなるはず。最終的には崩れるだけで、将来的には今とは別の著作権の概念が必要になると思います。
どうせ戻れないのなら押してしまってもいいかっなって所もありますね。

関連サイト:
 IT用語辞典 e-Words : Winny
 Winny開発者47氏逮捕祭ニュース

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アップルコンピュータの愚行? (April 18, 2004)
  • アップルコンピュータが iTunes Music Store を開始したとき、WMCでは、歓迎!アップルの "iTunes Music Store" と題する小論を発表しました。
  • ユーザをすべて窃盗犯とみなしてデジタル音楽配信に強力なコピープロテクト機能を付けようとするCD業界は、この動きによって牽制されると見ていました。
  • ところが、iPod と iTunes で大きなシェアを築いたアップルコンピュータが、コンピュータ市場でとった戦略と同じ戦略をとることを表明しました。
  • アップルコンピュータは、パーソナル・コンピュータの黎明期こそ大きな市場シェアを持っていましたが、自社の仕様を他社に使わせない閉鎖的なマーケティング戦略をとったため、逆の開放戦略をとったIBM・PCグループに負け、現在は5%弱のシェアに甘んじています。
  • アップルコンピュータが生き残っているのもマイクロソフトが自社の独禁法違反を逃れるため、アップルコンピュータを強力に支援しているからに過ぎません。
  • ところが、アップルコンピュータは、iTunes Music Store からダウンロードできるのは、iPod に限定しようと動いており、iTunes Music Store を独自仕様に閉じ込めようとしています。
  • これでは折角の良い音楽の流通機構も競争に負けてしまうのではないでしょうか?
  • アップルコンピュータがこのような戦略をとるのも音楽ダウンロードサービスは薄利多売(英フィナンシャル・タイムスによれば、wafer-thin margins とのこと)のため、利幅の大きい iPod で利益を得ようとしているのかもしれませんが、多分、逆効果になるように思えます。

参考ページ:
 iPod と iTunes が統合されたページ
 歓迎!アップルの "iTunes Music Store"

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