- ファイル交換ソフトWinnyの開発者が逮捕された事件に関しては、5月10日の新聞各紙に報道され、他のメディアにも報道されていますが、少なくとも私が接した報道はどれもこの事件の意味の重要なところに踏み込んでいないように思えます。
- 結論から書きますと、現在の著作権法は、アーティストの権利を保護し創造性の向上に資するという本来の目的ではなく、CD会社、映画配給会社などのアーティストを商業的に支える会社や団体の既得権益を保護するために存在するかのごとき状態になっていることが問題の本質であると思います。
- 報道機関からは、新しい音楽の流通機構に関する問題提起は無く、現在の既得権益者と同じ立場でこの事件を取り上げています。要するに彼らは、現在の流通機構の枠内でしか著作権法を見ていません。
- 現在の著作権法もここ100年位の間に整備されたもので、その前提として、デジタル複製やインターネットによる流通などは視野に入っていませんでした。
- ところが現在では、話を音楽に限っても、これまでの技術では簡単には複製できなかったCDやDVDが誰でも簡単に複製できるようになりました。また、流通チャネルも、今までの卸小売などを含む物流に頼る必要が無くなりました。
- このような技術革新のもとでは今までの音楽コンテンツの流通方法を変える必要があります。Winnyの開発者である47氏(彼は2ちゃんねるの投稿者名から47氏と呼ばれています)も本来の著作者には十分な収入を保証し、その権利の享受者には安価に提供できるようになることを望む発言もしています。
- 要するに、新しい技術を駆使すれば、アーティスト、リスナー双方に利益になる方法が考えられるはずであるにもかかわらず、現在の音楽業界関係者は既得権益を守ることに汲々としています。
- 私は、以前、「ファイル交換ソフトを提供する会社が著作権法に違反していると言うなら、コピー機の製造会社も著作権法に違反しており、包丁や鉄砲の製造業者は、殺人幇助罪にもなりかねないのではないでしょうか?」と書きました。
- 現にこれまで、世界中で数多くのファイル交換ソフトが開発されていますが、その開発者が逮捕された例は皆無です。今回の47氏が世界初となりますが、その逮捕理由は、ファイル交換ソフトを開発したからではなく、それを悪用することを支援(著作権違反幇助)したからと言われています。
- 実際にそうであったかどうかは分かりませんが、47氏が2ちゃんねるに投稿した記事(下記に引用)からは、47氏にその意思があったようにも取れます。その意味で、47氏には、勇み足があったのではないかとは思います。
- 今回の逮捕の裏に、既得権益者からの圧力があったなどということが無いことを祈ります。
47氏の投稿(2002年4月11日)文の引用:
個人的な意見ですけど、P2P技術が出てきたことで著作権などの従来の概念が既に崩れはじめている時代に突入しているのだと思います。
お上の圧力で規制するというのも一つの手ですが、技術的に可能であれば誰かがこの壁に穴あけてしまって後ろに戻れなくなるはず。最終的には崩れるだけで、将来的には今とは別の著作権の概念が必要になると思います。
どうせ戻れないのなら押してしまってもいいかっなって所もありますね。
関連サイト:
IT用語辞典 e-Words : Winny
Winny開発者47氏逮捕祭ニュース
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